沖縄美ら島財団(沖縄県本部町)の研究グループは6月17日までに、国内では奄美大島だけに自生する絶滅危惧種のサガリランの種子を増殖して育成し、5月に培養容器内で3株が開花したと発表した。研究の成果について「絶滅を回避するために生かされる」と期待している。
サガリランは中国やベトナム、タイなどに分布し、奄美大島が北限。常緑広葉樹林内の渓流沿いの樹上や岩の上にぶら下がって生える着生ラン。自生地が少なく、開発や乱獲で減少し、環境省のレッドリストでごく近い将来、絶滅の危険性が極めて高い絶滅危惧ⅠA類に位置付けられている。
研究グループは奄美大島のサガリランについて、「分布域の北東限に位置し、ランの分布様式や琉球列島の成り立ちを考察する上で重要な種」と強調。
保全技術の構築に向けて、環境省の「生息域外保全・野生復帰事業」で2016年度から約6年間、生態調査や培養手法の研究に取り組んだ。調査、研究には地元の行政、自然保護関係者、研究機関が協力した。
同財団総合研究センターの佐藤裕之主任研究員は「培養容器内で種から開花まで育成できれば、自生地の株が消失しても絶滅を防ぐことができる。(培養した)株を植え戻すことで自生地を復元することも可能になる」と期待する。
世界自然遺産に登録された奄美大島には、絶滅の恐れがある希少な植物が多い。佐藤研究員は「植物は目立たないため、知られることがないまま数を減らしているのが現状。研究活動を通じて、その存在と守るために活動している人が多くいることを知ってもらいたい」と述べた。
『南海日日新聞』LINEニュース配信中
その他のニュースはLINEでチェック!