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クルーズ船寄港、最多水準 再開から半年、奄美ファン獲得に注力を

国際クルーズ船の日本寄港が今年3月に再開され、奄美群島にも続々と国内外の船が訪れている。再開後、9月24日までに群島各港で計9隻、17回の寄港があり来島者は延べ5000人近くに上る。10月には過去最大となる9万トン級の船が奄美市名瀬港へ入港予定で、2023年度のクルーズ船名瀬寄港数は過去最多の20回(19年度)に並ぶ見込みだ。

古仁屋港に寄港したクルーズ船「ル・ソレアル」の出港イベント。「奄美の見送りは温かい」と好評だ=5月25日、瀬戸内町古仁屋

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クルーズ船は旅行代金や客室面積などから、①ラグジュアリー(1泊約400ドル以上)②プレミアム(同200ドル以上)③カジュアル(同70ドル以上)―に分類される。3月以降の入港船は①か②の小~中型船で、乗客は主に欧米の富裕層。初寄港の船も多かった。19年まで多く寄港した③は24年度以降の再開が見込まれている。

■商機

サービス豊富な高級クルーズ船では船内で食事をとる客も多く、地元商店からは「もうからない」との声も。そこで南薩観光(南九州市)は、乗客個人ではなくツアー主催者による「買い上げ」という形での還元に注力した。

5月に瀬戸内町古仁屋と喜界島に寄港した仏船「ル・ソレアル」の貸し切りクルーズでは、黒毛和牛や焼酎など九州の特産物を地域事業者から港で仕入れ、クルーズ代金に含む形で乗客に提供。鹿児島市の人気酒屋の店主を講師に招いた焼酎講座なども展開し、地域経済へ貢献しつつ、航海中に寄港地の魅力を伝え期待感を高めることにも努めた。

個人消費が地元小売店に反映されたのは、4月7日に喜界島に入港した日本船「にっぽん丸」。熊本県八代港発着で、寄港地は喜界島のみ。フェリー待合所内に設けられた物産展はお土産を買い求める乗客でにぎわった。

土産品はクルーズ序盤は買い控えがちだが、寄港地が一つしかない場合や旅程終盤では購入が集中する。寄港地ツアーで土産店に寄る時間が短い場合も、岸壁の物産展には好機。欧米客よりも、国内地方港発着クルーズの日本人客のほうが菓子類などの「お土産効果」が大きい。

奄美の自然を生かし、乗客の満足度を高めたのは6月20日に名瀬港へ入港した「ヘリテージ・アドベンチャラー」。運航会社は自然環境や野生生物への保護意識向上を目的としたクルーズを企画する。乗客数は53人と少ない分、要望に強く沿った寄港地ツアーを催行。地元の自然写真家、常田守さんをガイドに迎え、通常はあまり立ち寄らない野鳥観察ポイントで固有種のバードウオッチングなどを堪能した。オーストラリア国籍の男性客は「次は個人旅行でゆっくり滞在したい」と笑顔で話した。

■目的の共有

クルーズ船に経済効果を求めるならば、船のランク、乗客の国籍、客層、旅程、寄港地ツアーなど各船の特徴にも向き合いたい。画一的な対応ではなく、クルーズ全体を捉え「今回は」「この船では」どこに商機があるか、その見極めが必要ではないか。大規模な団体客の受け入れは環境負荷を伴い、外国語対応や交通手段の不足など課題も多い。官民の足並みがそろっていなければ、奄美の魅力は伝えきれない。

クルーズ船誘致の目的は、過度な経済効果ではなく乗客に私たちが暮らす「今の奄美」を知ってもらい、好きになってもらうため。そうして未来の奄美を訪れる人を増やすため。そうあってほしい。

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1946年(昭和21年)11月1日に奄美大島で創刊された奄美群島を主要な発行エリアとする新聞。群島民挙げて参加した日本復帰運動をリードし、これまでにシマの文化向上・発展のための情報を伝えてきた。
現在も奄美群島の喜界島、奄美大島、加計呂麻島、請島、与路島、徳之島、沖永良部島、与論島の8島を発行対象とし、その地域のニュース・生活情報を提供。現在、奄美出身者向けに奄美のニュース(本紙掲載)を月1回コンパクトにまとめた情報紙、「月刊・奄美」も 発行している。

■南海日日新聞:http://www.nankainn.com/

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