色鮮やかなハイビスカスたちが咲き誇る奄美の夏。海辺では天然のハイビスカス「オオハマボウ」も花の季節を迎えている。
高さ10メートル前後で群生し、濃い緑のこんもりとした樹冠をつくるが、身体に似合わず花はちらほら。花の径は10センチほど。朝開き、夕方にはしぼんでしまう一日花。咲き始めは黄色で、夕方近くになると徐々に赤みを帯びて落下するのだが、しぼんだまま翌日まで残っていることも。
砂浜やマングローブ林のほとんど海水に浸らない場所に生え、アダンなどとともに防風、防砂、防潮の重要な役目をし、公園樹や街路樹としても利用。さらに樹皮から採れる繊維は縄材に、年中どっさり茂る広い葉は飼料や緑肥に利用され、紙が貴重だった時代にはトイレットペーパー代わりにと、大いに人々の生活も支えてきた。
ハマボウの名は、浜に生えるホオノキ(朴の木)の意味。姿は似ていないが、いずれも葉が食物を盛ったり、包んだりするのに使われたことからとか、フヨウ(芙蓉)がなまったものとも。本種はハマボウよりも大型なのでオオハマボウ(大浜朴)。
そっくりな仲間に、奄美大島が分布の南限となるハマボウと北限種のサキシマハマボウがあるが、自生地は多くない。
奄美では海流で打ち寄せられたものをユリムン(寄り物)と呼び、それがたまる場所がユナ。打ち寄せられるほとんどはごみだろうが、材木や燃料用のまき、見知らぬ国の木の実や種子、貝殻など、恵みもたくさんある。本種の種子も海流によってユナに根付くのでユナギィ、ユーナの方言名が。
アオイ科。分布・小笠原及び種子島、屋久島以南。(アマチュア写真家)
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