鹿児島県喜界島に自生する固有植物ヒメタツナミソウの研究報告会(喜界町教育委員会主催)が3月30日、同町役場であった。兵庫教育大学の山本将也助教がDNA分析結果など最新の知見を紹介。クローンで増える同種の特徴を説明し、「同一種のいろんなDNAのタイプを守るためにも、遺伝子の違いでグループ分けして管理していくことが必要だ」と提言した。
ヒメタツナミソウはシソ科の多年草。葉の長さは5~9ミリほどで、白色や淡紫色の房状の小さな花を咲かせる。喜界町は2021年に花と自生地を町の天然記念物に指定し、調査や住民への普及啓発活動などに取り組んでいる。環境省レッドリストで絶滅危惧IB類。
山本助教はDNA分析などで分かった同種の特徴を▽奄美大島の近縁種より沖縄県の系統に近いが、遺伝的にかなり独立性が高い▽自家受粉し、節からも発根してクローン増殖する▽島内140個体中59のクローンが見つかった▽大規模な群生地でも単一遺伝子の場合がある―などと説明。「見掛け上の個体数と遺伝的な個体数が大きく異なり、遺伝的多様性が低い。DNAの違いに基づいた保全管理が重要だ」と指摘した。
報告会には住民ら約60人が来場。同町湾の冨充徳さん(54)は「百之台の数十メートルにわたる大群生が一つのクローンと聞き興味深かった。これまで以上に自然を大切にしていきたい」。同町上嘉鉄の大塚幸子さん(45)は「同じに見えても遺伝子が違うという話は、集落ごとに違う喜界島の方言のよう。むやみな除草剤の使用はやめてほしいと思う」と話していた。