課題となっているアマミノクロウサギの保護と観光を両立させようと、奄美大島の大和村で新たな施設の整備が計画されています。
大和村に住む中村修さん(53)の母校・大和小中学校では、1963年から1990年までの27年間、子どもたちがクロウサギを飼育。その様子を見ようと、年に1000人を超える観光客が学校を訪れた年もあったといいます。
(中村さん)「芋づるが好きだと聞いていたので。テル(竹籠)のいっぱいぐらいを学校に持っていって。日に日にえさが減っているのを見れば、子どもながらにうれしかった」
(記者)「今から39年前。アマミノクロウサギを飼育していた当時の子どもたちが報告書を作成していました」
子どもたちの報告書は、研究にも役立てられましたが、クロウサギが相次いで死んでしまったため、飼育は31年間、途絶えています。
その大和村で、アマミノクロウサギの研究飼育施設をつくる計画が進んでいます。施設は、交通事故などでけがをしたクロウサギを治療し、リハビリ中のウサギを観察できるようにするものです。世界自然遺産登録で増えるとみられる「観光」と「保護」の両立につながればと期待されています。
(中村さん)「ウサギを刺激することなく、ゆっくりウサギが生活している様子を観光客であったり、周りの人が観察できる。自然と共生、調和のとれた施設であってほしい」
奄美市の動物病院で働く獣医師の佐藤花帆さん。去年3月、交通事故でけがをしたアマミノクロウサギの手術に、国内で初めて成功しました。
けがで保護されたクロウサギで長期の入院やリハビリが必要な場合は、これまで400キロ以上離れた鹿児島市の平川動物公園に運ばれていましたが、島内にリハビリができる施設があれば、メリットは大きいと話します。
(獣医師・佐藤さん)「治療が終わった後に動物園に移管する流れが、どうしてもスムーズに行かないこともあって。大和村の2次施設でリハビリできることが期待できれば、すごくありがたい」
世界自然遺産登録で脚光を浴びる「シマの宝」をどう守っていくのか、新たな取り組みが動き出そうとしています。