林の中や林縁、沢沿いに生える多年草。日本各地に分布するこの仲間は、花の雰囲気や葉の形がさまざまで名前もさまざま。
奄美のものは葉に丸みがあるのでマルバハグマ(丸葉白熊)の別名もある。
白い花穂を仏具の払子(ほっす)に使うヤクの尾の毛「白熊(はぐま)」に例えた。
テイショウソウ(禎祥草)の名前の由来は定かではないけれど、「禎祥(ていしょう)」はなにか良いことの前ぶれとか。ひっそりとした山道でこんな花に出合えたら幸せな気分になるのは間違いないだろう。
長さ30~70センチにもなる花茎は平地では直立、斜面では垂れ下がるように伸びている。径1・5センチほどの花は3輪の小さな筒状花の集まりで、それぞれの花から紅色の雌しべが1本ずつ。花の盛りは晩秋だが、長い間続けているようだ。
生えている環境によって葉の形が微妙に異なり、林床ではほぼ丸葉だが水の影響の強い渓流などでは別物のように細葉のものも。
奄美には本種の他にオオナガバハグマ(大長葉白熊)の記録があるが、実態ははっきりしていないらしい。
写真は奄美大島北部の林道で。本種の他にも貴重など植物が多いこの場所では、うれしいことに道端の植物への影響を最小限にする道路工事がなされている。
道端で生きる植物の多くは適度に人の手が入ることが必要で、荒れすぎて日当たりが悪くなると消えてしまう。人と自然がうまい具合に付き合い続けられる島でありたい。
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