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【12月25日】奄美群島がアメリカだった時代とつながるスポットめぐり

毎年、この時期になると想像してみることがあります。
1953年12月25日。奄美にとって、とても特別な日。

当時の風景、街の様子、人々の表情、語っていたこと。この島に渦巻いたであろう熱気。

【12月25日】奄美群島がアメリカだった時代とつながるスポットめぐり

それは66年前、奄美群島が日本ではなく、アメリカ軍政下にあった時代。

名瀬の街なかには、当時につながることのできるスポットがいくつか残っています。あたたかでおだやかな12月の昼下がり、スポットめぐりをしてみました。

奄美群島の米軍統治下~日本復帰について

奄美群島がアメリカ軍政下に置かれたのは、1945年の終戦後すぐ。交易や経済活動は厳しく制限され、奄美群島民の生活は困窮を極めた。そんななか、奄美の未来を憂う群島民が団結し、署名や断食祈願などで日本復帰運動を展開。熱い思いは中央へと届き、1953年12月25日、奄美群島は日本復帰を果たした。

米軍官舎へと続く橋に残るプレート

米軍官庁がかつてあったという奄美市名瀬小俣町。施設の跡形はありませんが、そこへと続く道に、密かに跡が残されています。

【12月25日】奄美群島がアメリカだった時代とつながるスポットめぐり

橋の上にある鉄製プレート。見ると、「A.C.A.T 1952 奄美地区 民政府」とあります。

【12月25日】奄美群島がアメリカだった時代とつながるスポットめぐり

反対側にも「COMPLETED ON 20.AUG 1952」のプレート。

【12月25日】奄美群島がアメリカだった時代とつながるスポットめぐり

この先にあったという米軍官舎。いまは市民が行き交う住宅地。ひっそりと残るプレートの存在を知る人もいまは少ないかもしれません。

熱い思いが刻まれた復帰運動の舞台「名瀬小の石段」

【12月25日】奄美群島がアメリカだった時代とつながるスポットめぐり

日本復帰運動について語る上で名瀬小学校ははずせません。
校庭と校舎の境目にある石段。ここは、島民が日本復帰に向けた集会や会議を行った場所です。

【12月25日】奄美群島がアメリカだった時代とつながるスポットめぐり

階段の上には「奄美群島日本復帰運動発祥之地」の石碑も。

【12月25日】奄美群島がアメリカだった時代とつながるスポットめぐり

この石段の上がいわば舞台の壇上。校庭に集まった島民たちは壇上にあがったリーダーたちの弁に耳を傾け、日本復帰への思いをひとつにしていったのです。

【12月25日】奄美群島がアメリカだった時代とつながるスポットめぐり

毎年、日本復帰記念日12月25日はこの場所で「日本復帰記念の集い」(奄美市主催)が開催されます。制服姿の小中学生らが集い、当時の話を聞いたり、献花や詩の朗読などを行っています。

もっと知りたい!というあなたへ

もう少し復帰について思いを馳せたい、という方のために、以下のスポットもおすすめです。

おがみ山公園

【12月25日】奄美群島がアメリカだった時代とつながるスポットめぐり

「おがみ山」は、昔から市民が大切にしている憩いの場。市街地を一望する頂上広場には、「復帰記念碑」と復帰運動の父と呼ばれる泉芳朗(いずみ・ほうろう)氏の胸像があります。

奄美博物館

【12月25日】奄美群島がアメリカだった時代とつながるスポットめぐり

当時の様子を写真で知ることができます。行政的資料も集まっているので、どのように奄美群島が行政分離され、米軍統治下のなかで日本復帰運動が展開されてきたのかなどを詳しく学べます。

時を超えてもつながる思い

日本復帰にまつわる島の歴史は、いま島で暮らす私たちの日常には、あまり身近ではありません。しかし、随所であの時代、あの出来事への島人の誇りを感じることがあります。

息子の中学校の文化祭。
米軍統治下時代に教師たちが密航して教科書を手に入れた、という実話をもとにした劇発表がありました。

日本から分離され困窮した暮らしのなか、校舎は窓もないほったて小屋、そして教科書さえない状態。
島の未来を担う子供たちの教育に強い危機感を持った教師たちは、命をかけて密航を決行。内地で必死に教科書を手に入れ、島に持ち帰ったというお話です。

この実話は島では有名で、私ももちろん知ってはいたものの、子どもたちの熱のこもった演技と当時の人々の思いの強さに、改めて胸が熱くなりました。

年々語り部も少なくなり、「アメリカだった時代」の記憶は薄くなっているように見えます。しかし、奄美のアイデンティティーの一部は確かにあの歴史のなかにあり、それは時代を超えて、いまもいつでも島人の胸を熱くするに違いありません。

12月25日。
奄美群島だけの特別な日が、今年もめぐってきます。

㈱しーま 編集部 編集長 麓 卑弥呼

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ライター/しーまブログ編集長。東京都出身。大学時代に訪れた与論島にはじまり、縁あって奄美大島の新聞社に新卒で就職。さらに縁あって島人と結婚し、奄美に完全に根を下ろす。フリーライターなどを経て2014年にしーまブログに入社し、現在に至る。

■「奄美群島情報サイトしーまブログ」https://amamin.jp/

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