鹿児島県奄美大島だけに生息する国の天然記念物の野鳥オオトラツグミの一斉調査が17日早朝、島を縦断する奄美中央林道などであった。島内外から66人が参加し、歩いて鳴き声を聞き取った。生息確認数は117羽で、1994年の調査開始以降で最多となった。30年以上調査を行っているNPO法人奄美野鳥の会は「生息数が回復してきている」と手応えを示した。
調査は奄美市名瀬から宇検村までの中央林道と支線など約45キロで実施。参加者は1~3人に分かれ、夜明け前の午前5時半から1時間、往復4キロを歩いてオオトラツグミのさえずりに耳を澄ませた。「キュロロン」という特徴的な鳴き声を確認すると、方角や時間を地図に記録した。
初めて参加した奄美市名瀬の蘇(いける)鉄朗さん(58)は「思ったよりも早歩きで大変だったが楽しかった。来年も参加したい」と笑顔。実習のため同市名瀬に滞在中という宮崎大学農学部4年の豊崎祐介さん(24)は「姿を間近で見ることもできた。数が増えてきているのはうれしい」と話していた。
調査は奄美野鳥の会がオオトラツグミの生息状況を把握して保護につなげようと、毎年ボランティアの協力を得て繁殖期の3月を中心に実施している。今年で31回目。奄美中央林道の一斉調査でこれまでの最多は2022年の107羽だった。
同会の永井弓子会長(49)は「天気が良く風もない好条件だったこともあるが、ここ数年は100羽前後で推移しており、数が回復してきていると感じる。このままの状態を保っていければ」と話した。
オオトラツグミは奄美大島の原生的な照葉樹林内に生息。森林開発などで生息数が減少し、環境省のレッドリストで絶滅危惧Ⅱ類。1993年に種の保存法に基づく国内希少種に指定され、保護されている。