熊本大学は1日、鹿児島県奄美大島固有のラン科の植物アマミエビネの受粉に関する生態を調べた結果、南西諸島に生息する蜜蜂の仲間・オキナワヒゲナガハナバチだけが花粉を媒介していることが明らかになったと発表した。アマミエビネは蜂が集める蜜を持たないが、誤って訪れた蜂が花粉を運ぶ「だまし受粉」が行われているという。
同大大学院の杉浦直人准教授が、種生物学会発行の学術誌「Plant Species Biology」で7月27日に論文をオンライン公開した。
アマミエビネは山地の林床に生える地生ラン。春に白色や赤紫色を帯びた花を咲かせる。森林開発や盗掘などで数が減り、環境省のレッドリストで、ごく近い将来、絶滅の危険性が極めて高い絶滅危惧ⅠA類。
杉浦准教授は2015年から7年間にわたって奄美大島で調査を行い、アマミエビネの受粉について調べた。調査には自然写真家の勝廣光さん(74)=奄美市笠利町=が協力した。
アマミエビネの受粉の様子を、自動撮影カメラなども使って観察した結果、花にはさまざまな昆虫類が寄って来たが、受粉できたのはオキナワヒゲナガハナバチだけだった。
杉浦准教授は、蜂が林床に営巣するため、アマミエビネとすみかを共有していることや、蜜を吸う細長い口吻(こうふん)の長さが、通常は蜜が蓄えられる花弁の管の長さと適合していることなど、「受粉者にふさわしい特性をいくつも備え持つため」と推察した。
アマミエビネが受粉に成功して実を付ける割合は低いが、この蜂が多い年には割合が高くなる傾向が見られるとして、蜂が蜜を集める植物が生える林道脇など、「森林だけでなく近辺の開けた場所も一緒に保全管理していくことが望ましい」としている。
研究成果を受けて、杉浦准教授は「奄美大島は何度訪れても新たな発見、気付きがあり、非常に魅力的な場所。今後も生き物の暮らしぶりを少しずつ明らかにして、奄美の生物多様性の魅力を発信できたらうれしい」と述べた。
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