シリーズでお伝えしている「変わる農業」今回は、鹿児島県奄美市で環境にやさしい「たんじゅん農法」に取り組んでいる男性を紹介します。
(小坂田徹朗さん)「微生物のご飯です。微生物にご飯をやって、土の中の微生物を増やして、その微生物に野菜たちを育ててもらうというのが『たんじゅん』=炭素循環農法のやりかたです」
奄美市の小坂田徹朗さん(73)。自然にやさしい農業という炭素循環農法=通称、たんじゅん農法を実践しています。
(小坂田さん)「自然にある炭素資材です。どんどんこれを畑に入れて微生物のごはんにするわけです。ススキです」
小坂田さんが実践するたんじゅん農法では、まず、畑のすぐ近くに生えているススキを刈り取り、それを細かく裁断して畑にまきます。
数日乾燥させたススキを『炭素資材』と呼び、これを適切な割合で土に混ぜると、土の中の菌や微生物の働きが活発化。その結果、虫がつきにくくなり、化学肥料や農薬をまく必要がなくなるといいます。
岡山県出身の小坂田さんは大学進学と同時に上京し、定年までのおよそ40年、東京で暮らしました。そして、定年退職した13年前、セカンドライフの場所に選んだのが、妻の出身地である奄美大島でした。
(小坂田さん)「最初、酒造会社の営業をやっていたんですけど、黒糖と米を作って黒糖焼酎をつくろうかなと思っていた。だんだん農業の方がおもしろくて、はまっちゃいました」
写真は、小坂田さんの畑で収穫されたキャベツです。肥料も農薬も与えていないということですが、虫に食べられた跡が見られません。
(小坂田さん)「この畑広いですけど、ミミズ1匹もいませんから。ミミズがいないということは土が腐敗していなくて、この土、畑全体が発酵している」
3年前からは、サトウキビ畑の一部もたんじゅん農法に切り替えました。去年は、たんじゅん農法の畑の方がこれまでの畑よりも、10アールあたりの収穫が2トンほど増えました。
農薬を使わず、収量も増える、様々なメリットがあるたんじゅん農法ですが、
小坂田さんは、最大の魅力は環境への優しさだといいます。
(小坂田さん)「環境に優しい、それと体に優しい農業ということで取り入れた。(たんじゅん農法の畑は)雨水が表層を流れなくて、海を汚さない。海を汚さない=サンゴ礁を汚さない。サンゴ礁を汚さなければ、小魚もたくさん住めるようになって環境にやさしい」
現在、奄美大島でたんじゅん農法に取り組んでいる農家はおよそ20人。もっと仲間を増やし、育てた野菜を多くの人に味わってもらうことが小坂田さんの願いです。
(小坂田さん)「味覚に敏感な女性などには受け入れられやすい。まだまだ流通は少ないですけど、どんどん皆さんやったらいい」