和歌山県立自然博物館の山名裕介氏らの研究チームは、鹿児島県奄美大島沿岸のナマコ類の調査の結果、分布状況と生息環境の生態学的な関係が初めて明らかになったと発表した。調査で確認した14種のうち、2種は新種の可能性がある未記載種で、研究チームは「採集した標本を基に研究が進み、新種として発表されることが期待される」としている。
研究チームのメンバーは山名氏と国島大河氏(和歌山県立自然博物館)、小渕正美氏(遠藤貝類博物館)、藤井琢磨氏(鹿児島大学)。2019年9月発行の同博物館館報と、20年5月30日公開の国際学術誌「Plankton and Benthos Research」にそれぞれ論文が掲載された。
発表によると、調査は18年11月、大島海峡と笠利湾、加計呂麻島沿岸の3海域で実施。採集した14種類の分布状況と生息する海底の環境を分析した結果、ナマコの種ごとの分布パターンは、水深や海底の砂の粒の大きさ、砂の中の有機物の量などと関係があることが分かった。
未記載2種のうち、1種は「クレナイオオイカリナマコ」と呼ばれる大型のナマコで、国内では奄美大島と沖縄島で確認されている。新種の可能性が高いとみられていたが、長く研究が進んでいなかった。
ナマコは有機物を食べて海底の環境を浄化する役割を担っているが、近年は個体数の減少で生態系への影響が懸念されている。研究チームは今回の研究の成果について「奄美大島沿岸のナマコ類の保全に欠かせない重要な知見」と評価し、「全島で網羅的な調査が早急に行われることが望ましい」と強調した。