国の天然記念物ケナガネズミによるタンカン果実の食害がこのほど、大和村のタンカン園地で確認された。食害の確認事例はごくわずかで食害の量も少なく、生産量への影響は軽微とみられる。一方で、奄美大島で以前からあったクマネズミによる食害が昨年夏ごろから急増。園地に殺鼠(さっそ)剤を設置して対応する生産農家が増えており、環境省はケナガネズミ保護の観点から、食害がクマネズミによるものかケナガネズミによるものかについて、かごわな活用などによる解明を推奨。希少種保護と食害対策を巡り生産農家の対応が分かれそうだ。
ケナガネズミは奄美大島と徳之島、沖縄本島だけに生息する固有種。体長が20~30センチとネズミの仲間では国内最大で、背中の長い剛毛が名前の由来。尾は胴体より長く、先端側が白い。環境省のレッドリストで絶滅危惧ⅠB類に指定されている。天然記念物は文化庁の許可がなければ捕獲、駆除などはできない。
タンカン園地では以前から、樹皮がかじられたり、木から果実が落とされたりするなどの被害があり、クマネズミによるものと考えられていた。奄美大島では昨年、ケナガネズミが奄美市名瀬の市街地や瀬戸内町古仁屋など街中に出没する事例が相次ぎ、島内の一部自治体には昨年秋ごろから、農家から希少なネズミが要因とみられる食害報告が寄せられていた。
大和村は2023年度、環境省と協力して食害があった園地に自動撮影カメラを設置して実態調査を実施。近くに落ちていたふんやカメラの映像を調べたが、ケナガネズミによる食害は確認できなかった。
JAあまみ大島事業本部果樹指導員の大山綱治さんによると、ケナガネズミによる食害は今年2月、大和村福元地区でタンカン園地の巡回中に発見。収穫を控えたタンカンをかじる姿を園地主と目撃したという。
大山さんは「ケナガネズミも食べていたのは驚き。クマネズミと比べ、ケナガネズミは経営に影響を与えるほどの食害はなく、樹体へのダメージも確認されていない」と説明する。
村産業振興課は「急増するクマネズミによる食害の対策は必要だが、天然記念物のケナガネズミは駆除できない。今後の対策を環境省と協議したい」とした。
環境省奄美群島国立公園管理事務所の阿部愼太郎国立公園保護管理企画官は、ケナガネズミやクマネズミの個体数が増加した要因について▽マングース防除やノネコ対策などの外来種対策の効果▽21、22年に餌となるどんぐりが豊作-を挙げる。殺鼠剤による対策はケナガネズミへ影響があるとして、「小さなかご式わななどを用いて食害の原因を確認し、人とケナガネズミが共生する道を模索してほしい」としている。
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