コト

日本のゴーギャン 田中一村。絵の魅力や製作への熱意を学芸専門員に聞く!

亜熱帯特有のムシムシした重い空気の中を、軽やかにそよぐ海風。
ザワザワと揺れるたくさんの大きな葉の向こう側には、穏やかな海が優しく波音を響かせている。

奄美大島に移住して絵を描き続け、今や「日本のゴーギャン」とも呼ばれる画家、田中一村(たなかいっそん)。

その大胆で繊細な自然の描写は、見れば見るほど引き込まれ、まるで奄美大島の海辺に立っているかのような感覚にさせられます。

見る人を強く惹きつける一村の絵の魅力とは?
作品を描き続けた熱意と、集落での暮らしぶりはどんな風だったのでしょうか?

奄美大島にある田中一村記念美術館の学芸専門員、有川幸輝さんにお話を伺いました。

田中一村の絵の魅力

「奄美大島の強い日差しのもと輝く奄美の自然を、色鮮やかに大きく描いているのが一村の絵の特徴です」と有川さん。

鮮やかなオレンジ色の実をつけるアダンの木や「キョロロロ」と鳴く鳥のアカショウビンなど、奄美ならではの自然が描かれる一村の作品。
奄美大島に訪れた人が実際に見る島の景色とリンクして、思わず惹きつけられます。

注目してほしいポイントは、遠近感。
一村の作品でたびたび見られる構図は、手前にアダンなどの木々が生い茂る奄美の森があり、その奥に海が揺らめいているというもの。
奥行きが墨の濃淡で表現されていて、見る人の目線が自然に画面奥の海のほうへと向いていくように描かれています。

また、光を意識しているのも特徴の一つ。
森の奥に見える海や立神岩(たちがみいわ)にスーッと木漏れ日が伸び、神秘的な大自然が描かれています。

神様の伝承が数多く残り、ユタ神様への信仰も根強い「神の島」奄美大島らしい神々しさが、光と濃淡で見事に表現されています。

田中一村記念美術館で特に見てほしい作品は、常設展示のチラシにも掲載されている『不喰芋と蘇鐡(クワズイモとソテツ)』。
奄美の密林の中にも、遠くに海や立神が覗いて、爽やかな風が海まで吹き抜けていくような爽快感があります。

一村の特徴である遠近感や光の描写が一枚の絵にギュッと凝縮されたこの作品。
一村は、この大作を「閻魔(えんま)様に持っていくので死ぬまで手放したくない」と、いくら高額で買取を提案されても拒否していたそうです。

集落での暮らしぶり&一村終焉の家紹介

田中一村は奄美大島の集落ではどのような暮らしを送っていたのでしょうか?

その暮らしぶりは「清貧」の一言。
「貧しいながらも、絵にかける熱意はすさまじいもので、絵のために全てを捧げる生活だったそうです」と有川さん。

上の写真は、一村が69歳で人知れず息を引き取るまで住んでいた住居。
現在は「田中一村終焉の家」として無料公開されています。
華美な装飾は一切なく、本当に質素な生活をしていたということがひしひしと伝わってきます。

物置小屋として使われていた小さな小屋を借りて、自分で修繕して暮らしていた一村。
集落から切り離されたような山道にあるこの家を、御殿のようだといってとても喜び、新たな創作意欲を燃やしていたといいます。

一村は奄美では大島紬の仕事をしていたのですが、当時の日給は450円。
お金を少しずつ貯めながら5年間働いて、その後3年間は絵を描くために時間を使うという生活をしていました。

とても勤勉で細かな作業ができるので、誰かが色を間違えて着色した際の修繕など、作業場の中でもより細かな仕事を任されることもあったとのこと。

そんな一村ですが、集落の人からは「変わった人」として扱われ、ご近所付き合いなどは限られていたそうです。

その中でも、スケッチをするために魚を提供してくれたご夫婦や、奄美焼き職人のご夫妻など、一部の人とは交流していました。朝起きて山道を散歩していた際に、世間話をしたり、奄美焼き談議に花を咲かせていたりしていたようです。

『田中一村終焉の家』

  • 住所 … 鹿児島県奄美市名瀬有屋町38-3
  • 定休日 … 無休
  • 料金 … 無料

田中一村記念美術館の所蔵絵画

田中一村記念美術館では、幼少期から晩年までの約80点の作品が常設展示されています。
最初にご紹介した『不喰芋と蘇鐡』(2020/9/17~12/15は複製画展示)も見ることができますよ。

展示室は奄美の伝統建築である高倉をイメージして作られ、開放感のある室内で作品をゆったりと鑑賞できます。

奄美大島の旅の始まりや終わりに、一村が描いた奄美の自然に魅了されてはいかがでしょうか?


『田中一村記念美術館』

  • 住所 … 鹿児島県奄美市笠利町節田1834
  • 開館時間 … 午前9時から午後6時まで ※入館は閉館時間の30分前まで
  • 休館日 … 毎月第1・3水曜日(祝日の場合は翌日)
    *4月29日~5月5日,7月21日~8月31日,12月30日~1月3日は開館
  • 料金
    大人 … 520円(410円)
    高校・大学生 … 70円(290円)
    小・中学生 … 260円(200円)
    ※ ( )内は20名様以上の料金

http://amamipark.com/isson/

㈱しーま 編集部ライター 藤原志帆

投稿者の記事一覧

大阪大学外国語学部卒業。在学中チリ、スペイン、アメリカに留学し、中南米の6カ国28都市をバックパッカーとして周遊。その後新卒で不動産広告のITベンチャー企業に就職し、トップセールスを獲得する。TOEIC865点、スペイン語検定4級取得。現在は美しい海に憧れて奄美大島に移住し、フリーライター、通訳士(スペイン語・英語)、アフリカンダンサー、予備校など多方面で活動中。地酒の黒糖焼酎が大のお気に入り。

■「奄美群島情報サイトしーまブログ」https://amamin.jp/

関連記事

  1. 訪問客はシラサギ 和泊町、陽光浴びてさらに白く
  2. 南海日日新聞〔写真〕大島海峡の景色を楽しみながら歩くウオーキングイベント参加者=26日、瀬戸内町 瀬戸内町、大和村エリアが開通 自然遺産奄美トレイル
  3. 夢かなう パラリンピアン来島
  4. ツカリ膳供え祖先に祈り アラセツ前日、国文化財受け継ぐ秋名・幾里…
  5. 脱、コロナ疲れ。大好きな唄で繋げ100人リレー! 脱、コロナ疲れ。大好きな唄で繋げ100人リレー!
  6. 大島紬の「奄美ウエア」伝統工芸士会、産地PRに一役 大島紬の「奄美ウエア」伝統工芸士会、産地PRに一役
  7. 島中安寧、コロナ収束願い舞う 与論十五夜踊を奉納
  8. ナイトツアー 冬場はナイトツアーが面白い!

奄美群島マップ

奄美群島マップ

あまみじかんリンク

南海日日新聞 奄美大島観光サイトしーまブログ あまみエフエム ディ!ウェイヴ! エフエムうけん NPO法人 エフエムせとうち76.8MHz エフエムたつごう78.9MHz あまみテレビ 天城町ユイの里テレビ ERABUサンサンテレビ
PAGE TOP