1年の豊作と集落の繁栄を祈る「豊年祭」のシーズンが10日、鹿児島県奄美大島宇検村の久志、芦検、屋鈍の3集落ではじまった。各地域で振り出し行列や相撲、歌や踊りが繰り広げられ、出身者や帰省客らも加わって集落は熱気に包まれた。芦検集落(前田勝彦区長、131世帯228人)では名物の「フッジャシ(振り出し)」に男女約80人が参加し、勇壮な掛け声と歌声が集落中に響き渡った。
振り出し行列は豊年祭の始まりを告げる儀式。芦検集落では羽織はかまの「トノサマ」と露払い役を先頭に、祭祀(さいし)を行う「トネヤ」から土俵のある「アシャゲ」までの宮道(ミヤミチ)を男女が列をなして練り歩く。まわし姿の男衆が「ヨイヤ、ヨイヤ、ヨイヤ」「ワイド、ワイド、ワイド」の掛け声でゆっくりと歩みを進め、浴衣姿の女衆が「ミッチャレ節」で道を歌い清めながらその後に続いた。
トノサマ役は数え年で49歳の「アガリ」の年代が担う決まり。今年の大役を務めた壽山新太郎さん(48)は「芦検の振り出しは村一番だと改めて感じた」と笑顔。露払い役を務めた息子の空さん(23)は「このために沖縄県から帰省した。親子で祭りを盛り上げられた」と誇らしげに語った。
赤ちゃんの「初土俵入」や年齢別の相撲で盛り上がったほか、村の無形文化財にも指定されている「芦検稲すり踊り」も披露された。合間には集落で7月に収穫されたもち米の握り飯「カシキ」がふるまわれ、最後は全員で輪になって八月踊りで締めくくった。
前田区長(70)は「豊年祭は集落にとって最も大切な日であり、伝統の(フッジャシの)掛け声を聞き思わず涙がにじんだ。全国各地、海外からも多くの人が集まってくれてありがたい」と話していた。
宇検村では9月15日までの約1カ月にわたり、全14集落で豊年祭が開かれる。8月11日は田検、部連、佐念、平田の4集落である。
『南海日日新聞』LINEニュース配信中
その他のニュースはLINEでチェック!