希少な動植物が多く、世界自然遺産の主要エリアとなっている奄美大島の湯湾岳(鹿児島県大和村・宇検村)で11月25日、一部区域への立ち入り規制などを盛り込んだ利用ルールの試行が始まった。同日は環境省が山頂近くの広場に整備していた展望台が完成し、関係者らにお披露目された。同省は「貴重な自然環境の保全を前提に、持続可能な利用の推進を図る」として、登山者に協力を呼び掛けている。
湯湾岳は奄美最高峰の標高694・4メートル。亜熱帯照葉樹の森にアマミノクロウサギなど希少種、固有種を含め多様な動植物が生息・生育している。奄美大島を開祖した二神が降り立ったといわれる霊峰で、参拝に訪れる登山者も多い。
利用ルールは世界自然遺産登録に伴う登山者の増加を見据えて、専門家や地元関係者らの意見を踏まえて環境省、林野庁、県、大和、宇検両村が策定した。
山頂付近と、展望台が整備された祠(ほこら)や石碑がある広場へ続く登山道2ルート、登山口にある公園など〔保全ゾーン〕・〔準保全ゾーン〕・〔自然体験ゾーン〕の3エリアに区分し、それぞれ利用方針を定めた。
〔保全ゾーン〕は、山頂から展望台がある広場に続く約250メートルの山道。厳正に保護するため立ち入りを原則禁止する。
〔準保全ゾーン〕は、宇検村側の登山道約1・6キロ。環境負荷を軽減するため、利用は1グループ8人程度以下の少人数とし、ガイドの同行を推奨する。
〔自然体験ゾーン〕は、宇検村側の登山口のある湯湾岳公園周辺と、展望台の広場まで木道が整備された大和村側の登山道約370メートル。誰でも自由に利用できる。
湯湾岳周辺は奄美群島国立公園の特別保護地区に指定されており、全ての動植物の捕獲、採取が禁止されている。ルールでは他に▽外来種の持ち込み▽植物の踏み荒らしや樹木の伐採▽歩道や広場以外への立ち入り―などを禁止した。
関係者の合意に基づく地域の自主ルールで、法的強制力はない。
同省奄美群島国立公園管理事務所の阿部愼太郎所長は「湯湾岳は生物多様性の核となる場所。神聖な場所として信仰の対象になっている。きちんと保護しながら利用していく必要がある」と述べた。
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