鹿児島県龍郷町の民家で保護されたリュウキュウコノハズクのひなが15日、民家に設置した仮巣から巣立った。同町の奄美いんまや動物病院の伊藤圭子獣医師は「人がつないだ縁と協力で無事に巣立ちできてよかった。これからの時期、アカショウビンなど巣立ちのひなが地面にいることがあるが親鳥は近くにいる。基本はそのままにし、悩んだときは相談を」と呼び掛けている。
ひなを発見したのは同町の野村真仁さん。2日、自宅で夕食の支度をしていたとき窓の外にいた白いひなを見つけた。周囲に親鳥や巣は見当たらず、段ボール箱で保護。「ぴーぴー」と鳴く姿が愛らしく「ぴーちゃん」と名付け世話をした。
2日後、連絡を受けた奄美自然観察の森観察指導員の川畑力さんが野村さん宅を訪れた。家の周囲を確認すると屋外換気扇カバー奥が巣になっており、隣家では別のひなが見つかっていたことが判明。2羽は伊藤獣医師のもとへ運ばれた。
伊藤獣医師は2羽が巣立ち前のひなで、巣のトラブルで早めに出てしまったものと判断。巣立ち前のため野に放すことはできず、巣に戻すことも難しいが、体格や健康状態が良いことから近くに仮巣を設置し親鳥が来るのを待つことに。野村さんは隣家に協力を仰ぎ、元の巣に近く安定した隣家の梁(はり)に手作りの巣箱を設置。ストレスを与えないよう監視カメラで見守った。夜には親鳥が出入りする様子が見られ、15日に無事に巣立ったことを確認した。
「あまりにかわいくて、一時は飼ってしまおうかと思った」と野村さん。だが「家族がいるなら共に暮らすべきだし、本来あるべき姿で生きるのが、あの子たちにとっての幸せだと思った」と笑顔で話した。生態系のバランスを保つため、国や県の許可なく野鳥を飼育することは禁止されている。
伊藤獣医師は「仮巣が気になり、中をのぞいてしまう人もいるが、野村さんは親鳥に任せると決め、しっかり守り抜いてくれた。私も『巣立ちだからそのままに』と現場を見ず決めつけてしまいそうになった。巣立ち前に2羽も巣を出るケースは少ないが、確認が必要な場合もある。今回は動物病院へ運んできてくれて正解だった。親鳥も放棄せず育ててくれてよかった」と安堵(あんど)した様子で語った。
『南海日日新聞』LINEニュース配信中
その他のニュースはLINEでチェック!