伝統・文化

「泥染め」で奄美大島の伝統技法を体験!自然の恵みを利用した天然染色を楽しもう

奄美大島ならではの文化体験が気軽にできる「泥染め」。手触りのいいサラサラの泥を揉み込んで染めていく伝統技法を、奄美大島で体感することができます。お気に入りの服やトートバッグに取れないシミや日焼けができてしまった…という場合でも、自然の色で染めることでよみがえらせ、また使えるようになりますよ。
「泥染め」とはどんな技術なのか、どうやって行うのかなどを、実際に体験した様子とともにご紹介します。

そもそも「泥染め」とは?

泥染めは、奄美大島の豊かな自然を活用した伝統的な染色技法。この泥染めによって染色した深みのある黒色の絹糸は、世界三大織物のひとつであり、戦後の奄美大島の経済を支える基幹産業のひとつであった大島紬の生地に欠かせない素材です。着物文化が薄れてきた現代では、大島紬の絹糸を染色する他にも、泥染めならではの色合いを活かした洋服や日用品など、新しい商品も産み出されています。

天然染色技法では通常、「藍染め」や「ウコン染め」のように染料にする植物の名前が名称に用いられることが多いです。では「泥染め」は泥の色素で染めるの?と思う方もいるかもしれません。
実は泥染めの泥は染料を繊維に定着させる役割を果たしています。実際に繊維を染める染料となるのは、シャリンバイ(奄美の方言ではテーチ木)という木から煮出した色素なんです。

▲シャリンバイの木を砕いてチップ状にして煮て、色素を抽出。抽出液を発酵させて染料にします。写真は煮出した後のシャリンバイのチップ。

泥染めで使用する泥はどんな泥でも良いわけではなく、鉄分を多く含む泥を使います。この泥の鉄分が、シャリンバイに含まれるタンニンと反応して繊維が染まっていきます。鉄分を多く含む泥は奄美大島の中でも限られた場所の泥田にしかないそうで、そのような泥田や染料や泥を流す川が近くにあるなど、条件を満たす場所でしか泥染めはできないのです。

奄美大島では、緑あふれる環境の中、泥染めの泥田の中に足を踏み入れ、さらさらふわふわの泥に触りながら布を染める泥染め体験ができます。まさに自然と文化が深くつながった奄美大島ならではのアクティビティです!

手触りが気持ちいい!泥染めを体験

実際の泥染め体験の様子をお見せしながら、泥染めの工程についてさらに詳しくご紹介していきます。今回は、奄美大島北部の龍郷町にある「金井工芸」で泥染め体験をさせていただきました。工房の中に入ると、シャリンバイの染料の酸っぱいような熟成されたような、気分が落ち着く独特の香りが漂ってきます。

泥染め体験ではTシャツやハンカチなど染めたいものを持参し、柄を入れたい場合は輪ゴムや洗濯バサミなどを使って絞っていきます。柄の部分を絞ったら、布を染まりやすくするために水にひたして軽く絞ります。ここからいよいよ染めの工程に!

まず、シャリンバイから煮出して発酵させた染料に布を浸します。まだ一度も使っていないシャリンバイの染料は赤茶色ですが、何度か染料として使うとさらに赤みが増して、えんじ色のような色合いに。この2つの色をブレンドすることで繊細な色合いに調整できるのです。

この染料を布に揉み込みます。もういいかな?まだもうちょっと揉み込んだほうがいいかな?と、布の様子を確かめながら染めていきました。

布が赤茶色に染まったら工房横の泥田に持っていき、今度は泥で揉み込みます。ここで染料の中のタンニンと泥の中の鉄分が反応し、色素が定着していきます。

膝を超えて太ももの真ん中くらいまでの丈の長靴を履いてから泥田に入るのですが、思ったよりも泥田が深くて膝くらいまで泥の中に浸かってしまうことに!
泥は鉄分の色でしょうか、茶色というよりは黒っぽくて、なんだかさらさらふわふわとした手触り。ちょっとひんやりしていて、触っていると気持ちよかったです。

▲[左]丈の長い長靴を履いて泥田へ! [右]泥の色は黒っぽく、乾くと薄い灰色に。

職人さんたちが大島紬の絹糸を黒く染める時は、このシャリンバイの染料で染めて泥を揉み込む工程をなんと100回近くも繰り返すそう!大島紬の絹糸を染めるのにいかに膨大な時間が必要か、想像できないほど大変な作業ですよね…。

もちろん、体験ではそこまではしません。泥田から上がったら布に付いた泥をたっぷりの水で洗い流し、水気を切って完成となります。ちなみに今回はグラデーションTシャツを作りたかったので、泥を落としたあと、色を変えたい部分だけもう一度シャリンバイの染料で染めてみました。

出来上がったのがこちら!グラデーションTシャツは最後にシャリンバイで染めた上半分も綺麗に染まっていて、満足のいく仕上がりになりました。

染料をシャリンバイの木から抽出し、泥で色素を定着させ、川で染料や泥を落とすなど、奄美大島の自然を活用して行われる「泥染め」。奄美大島の伝統文化や大自然に触れながら、泥染め体験で日用品をよみがえらせ、思い出を持ち帰ってみませんか?


■金井工芸

住所:鹿児島県大島郡龍郷町戸口2205-1
TEL:0997-62-3428
ホームページ:http://www.kanaikougei.com/
Instagram:https://www.instagram.com/kanaikougei/
泥染め・藍染め体験:3,000円/1日(要予約)

㈱しーま 編集部ライター 藤原志帆

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大阪大学外国語学部卒業。在学中チリ、スペイン、アメリカに留学し、中南米の6カ国28都市をバックパッカーとして周遊。その後新卒で不動産広告のITベンチャー企業に就職し、トップセールスを獲得する。TOEIC865点、スペイン語検定4級取得。現在は美しい海に憧れて奄美大島に移住し、フリーライター、通訳士(スペイン語・英語)、アフリカンダンサー、予備校など多方面で活動中。地酒の黒糖焼酎が大のお気に入り。

■「奄美群島情報サイトしーまブログ」https://amamin.jp/

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