北海道大学大学院講師でNPO法人喜界島サンゴ礁科学研究所理事長の渡邊剛氏らの研究グループは、鹿児島県奄美大島の住用湾の造礁サンゴの骨格を分析した結果、過去の豪雨や土砂の流出が、サンゴの生息環境や成長に影響を与えていることが明らかになったと発表した。12日公開のオンライン学術誌「Scientific Reports」に論文を掲載した。
発表によると、研究グループは住用湾産の造礁サンゴの骨格を使って、サンゴの成長の記録と、過去46年間に起きた集中豪雨などの気象現象や、沿岸域での大島紬の生産や農業などの産業史の変遷を比較した。
住用湾では定期的な水質モニタリングが実施されておらず、長期的、定量的なサンゴの成長の変化は明らかになっていなかった。サンゴの骨格には樹木のように年輪が刻まれ、過去の海洋環境の変動が記録されており、分析の結果、豪雨や産業の発展によって湾内に流れ込む土砂流量が、サンゴの骨格成長を制御する要因の一つであることが分かったという。
研究グループは「気候変動による局地的な豪雨の頻発や人類活動の増加が予想される将来の熱帯、亜熱帯地域で、サンゴ礁と人間社会が持続的な相互関係を築いていくための重要な知見となると期待される」としている。
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