「そろそろ左手に喜界島が見えてきます。窓をご覧ください」
鹿児島県奄美市笠利町の奄美空港から同市の名瀬市街地へ向かう路線バス車内。ともすれば退屈な片道1時間の道のり。走り出して数分後、車内のアナウンスが注意事項からいつの間にか観光案内に切り替わっている。気づいた乗客がイヤホンを耳から外し、一斉に窓に目を向けた。
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しまバス運転手の田中旭さん(62)は認定エコツアーガイドの資格を持つ。路線バスを運転しながら奄美の気候や世界自然遺産に登録された動植物ネタ、鶏飯のおすすめの店に至るまで多岐にわたる観光情報をアナウンス。大きなスーツケースを抱えて乗るにはまだまだ不便な路線バスだが、田中さんの「ツアーガイド」を聞くとお得な気にすらなる。
7年前に名古屋から奄美大島に移住。独学で奄美のことを学ぶうちにとうとうガイド資格を取得するまでになった。世界自然遺産に登録された奄美大島だが、自然を見に来たという観光客に出会うことはまだ少ない。「奄美の自然を五感で感じてもらうことで、より自然を守りたいと思ってもらえるようにしたい」と話す。
「バスガイド付き路線バス」。きょうも島を駆け抜けつつ客を和ませる。
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