奄美といえばサトウキビ、黒糖。
すぐにそう連想させるほどに、奄美の各島には青々としたサトウキビ畑が広がっています。
しかしもともと、奄美で多く栽培されていたのはサトウキビではなくお米。亜熱帯に位置する奄美では、年2回収穫することのできる「二期作」が行われていました。
しかし薩摩藩の侵攻・支配によって、当時高い価値を持っていた砂糖をつくるべく、奄美の田んぼはサトウキビ畑に変換を強いられました。
そうして姿を消していった田んぼですが、いまも奄美大島でもっとも水田が残る貴重なエリアが、龍郷町秋名・幾里集落。
山と海とのあいだに広がる田袋には、農作業を行う人々の姿のほか、鳥や昆虫などさまざまな生き物もやってきて、のどかで豊かな営みを感じることができます。
また秋名・幾里集落では国指定重要無形民俗文化財の「ショチョガマ」「平瀬マンカイ」といった貴重な伝統行事も継承されており、稲作だけでなく、文化、歴史、そしてそれに伴う人々の結いの心などが大切に継承されているエリアです。
ここに2020年6月にオープンしたのが、龍郷町営の宿泊飲食施設「荒波龍美館(あらばりゅうびかん)~荒波(あらば)のやどり」。2階に宿泊、1階に飲食スペースがあるほか、食品加工室や移住相談にも対応する多目的な施設です。
人口減少などがすすむ同町の荒波(あらば)地区の活性化を期待され新設されたこの施設。新型コロナウイルスの感染拡大によりオープン時期が遅れていましたが、6月に飲食スペース「あらば食堂」が、テイクアウトの弁当販売のみでオープン。そして7月、店内飲食開始で本格オープンとなりました。
施設を管理するのは「一般社団法人E’more秋名(イモーレあきな)」。
「荒波のやどり」以外にも荒波地区内に2棟の宿泊施設を運営し、「シマの自然、文化、豊かな暮らしぶりを将来の世代に引き継ぐ」というコンセプトで活動をしています。
7月1日から店内飲食がスタートした「あらば食堂」でいただけるのは「おっかんの手料理のような、旬食材を使った島料理」。
メニューは、
- おっかんの旬替わり定食1200円
- シマの豚汁
- シマうどん
- おにぎり
など。
ポイントは、「シマで採れた旬の食材を、シマのおばたちが昔ながらの味付けで調理する」こと。
どこかから取り寄せた食材でもなく、レストランで修行を積んだシェフでもありません。ただ、シマでその時季に採れた農水産物を使い、家族や周りの人たちのために切磋琢磨してきたおばたちが自慢の腕を奮う、そんな懐かしいシマの家庭料理が食べられる食堂です。
一番人気の「旬替わり定食」は、まさにその時々によってメニューが変化。
取材に訪れた7月中旬は、
豚軟骨とシブリ(冬瓜)の煮物/ニガウリの梅干し和え/とっつぶる(島かぼちゃ)の煮しめ/パパイヤとハンダマのサラダ/シーガン汁(海のカニ汁)/島モモのコンポート/くびき茶orグァバ茶
といった、なんとも魅力的な内容でした!!
シマのお母さんやばあちゃんが作ってくれる、滋味深くシマの暮らしに結びついたシマじゅーり(島料理)そのもの。
でも「だからこそ価値がある」と、E’more秋名の村上裕希代表は話します。
シマで受けつがれてきた「当たり前」が、いま、実は貴重で受け継ぐべき価値がある大切なものなのだということ。そしてそれを地元で暮らす人たちの手で発信していくということの大切さ。
そんな温かな「大切なもの」に触れ、感じることのできる「あらば食堂」。
奄美大島にお越しの際は、ぜひお立ち寄りくださいね。
- あらば食堂
- 鹿児島県大島郡龍郷町幾里423番地
- 営業時間 11:30-14:00(数量限定)
- 定休日 火曜、木曜
- 問い合わせ 090-7470-3143(E’more代表理事 村上さん)
- E’more秋名HP https://e-akina.com/
- E’moreFacebook https://www.facebook.com/e.akina.amami