鹿児島県奄美大島瀬戸内町古仁屋のちゃんこ料理店「神鷹」の弁当が人気を呼んでいる。その名も「筋肉弁当」。「筋肉マッチョ」な元理学療法士の若大将が、高タンパク低カロリーの素材と調理法にこだわり開発した。自粛、自粛で「コロナ疲れ」が漂う街に、「身も心も元気になってほしい」と願いを込めている。
考案したのは川畑龍太郎さん(30)。身長170センチ、体重105キロ。趣味は筋トレ。毎日通うジムで鍛えた、胸囲約130センチの分厚い胸板にエプロンをし、太さ約44センチの上腕で毎日厨房でフライパンを振る。
実家が営む同店に入ったのは2年前。古仁屋の病院で理学療法士として5年勤務したが、「父の跡を継ぎたい」と転職を決意。1年間居酒屋で修行を積んだ後、実家の店の調理場に立つようになった。現在、両親と姉と店を切り盛りしている。
川畑さんの「マッチョ」は父譲り。父・活吉さん(65)は、かつて朝日山部屋の幕下力士「神鷹活吉」。現役を退き、料理店で修行を積んだ後、38年前に開店したのが「相撲茶屋 ちゃんこ神鷹」だ。現役時代は178センチ、体重88キロあった活吉さんだが、今や龍太郎さんはその体重をしのぐ巨漢だ。
新型コロナウイルスの影響を受け、店内営業が厳しくなった4月。「店頭で持ち帰ることができる弁当を」と考えた時に、龍太郎さんが思いついたのが、筋トレ愛好家たちの間で注目を集めていた低脂肪かつ高タンパク質の料理「筋肉飯」だった。屈強な男たちのパワーの源・筋肉飯なら、免疫力を高めるだけでなく、社会に漂うコロナの重苦しい雰囲気も吹き飛ばせるのでは│。ノリと勢いで開発に乗り出した。
調理に油を使わず、蒸すかグリルに限定。牛肉や豚肉の代わりに高タンパク質の鶏肉を使用。手間はかかるが、丁寧に皮や脂肪をそぎ落とし、低温調理でじっくり味をしみ込ませた。誕生した「グリルチキンバルサミコ酢」「鶏胸肉の塩麹漬け」を「筋肉弁当」と名付け店頭で販売を始めた。
筋肉弁当は、揚げ物中心の弁当が多い中で、瞬く間に注目を集め、販売初日から完売。休校中の子供たちや主婦の受けも上々で、早い日では約30分で40食が完売した。
4月18日の店内営業自粛から1カ月。15日からは店内営業を再開する。好評の筋肉飯は引き続きランチとして提供される。「コロナ禍だからこそ開発できた。販売化に当たりとことん家族で話し合い、これまで以上に結束が強くなった。コロナのおかげで良いこともあるんだな」と前向きだ。減収には頭を抱えるが、「やるしかない」と力こぶを作る。身も心もタフガイとして、家族一丸で挑戦を続ける。
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