【特集】世界自然遺産登録

自然遺産登録1ヵ月 観光業=効果実感なく、コロナ後に期待

7月26日に鹿児島県の奄美大島と徳之島が世界自然遺産に登録されて1ヵ月が過ぎた。観光業界では、登録直後にレンタカーやホテル、エコツアーの予約が増え、来島者も昨年に比べて増加するなど登録効果が一時的に見られたものの、新型コロナウイルスの全国的な感染拡大で期待された地域活性化には程遠いのが現状だ。関係者は「登録効果が表れるのはコロナ収束後」と口をそろえる。住民からは「登録された実感はまだない」との声も聞かれる。

「夏休みに入ったこともあって登録後は観光客がどっと増えた」と話すのは、奄美大島でレンタカーやホテルなどを展開するビッグビジネス(奄美市)の向井純一代表取締役(44)。レンタカーは予約が殺到して貸し出し車両が足りないほど。ホテルにも旅行会社からの問い合わせが相次いだが、8月に入ってからは一変した。向井代表は「帰省客も多く、順調だったがコロナの影響で8月中旬以降はキャンセルが増えた。県の『今こそ鹿児島の旅事業』停止も大きい。苦しい状況は年内いっぱい続くと思う」と語った。

徳之島ではクラスター(感染者集団)発生が大きく影響した。徳之島町金見集落を拠点に活動する金見あまちゃんクラブの代表理事で奄美群島認定エコツアーガイドの元田浩三さん(67)は「ナイトツアーなどの予約は一時的に増えたが8月に入ってからはすべてキャンセル。島の状況を踏まえ、こちらからキャンセルをお願いすることもあった」と残念がる。他方で、「世界に認められた豊かな自然を後世に残していこうという住民の意識は確実に高まっている」とも話し、これまで島内で取り組まれてきた環境保全活動が実を結んでいると強調した。

奄美群島観光物産協会では、登録後に関東や関西、県本土を中心に奄美への旅行を計画する人からの問い合わせが増えたという。担当者は「コロナ禍で『ぜひ来てください』とも『来ないでください』とも言えない」と複雑な心境を吐露。来年以降のツアーを見据えた旅行会社の動きもあり、「期待できるのはコロナが収まってから」とみる。

遺産登録された両島以外の島への波及効果もコロナの動向次第だ。ヨロン島観光協会の町岡安博事務局長(56)は「この夏の観光客数は昨年に比べ回復したが、来島自粛を呼び掛けたこともあって例年の半分以下。コロナが収まれば、必ず与論にも効果が表れる」と期待を込めた。

南海日日新聞〔写真〕人気スポット「ハートロック」を目当てに多くの観光客が訪れる海岸=27日、龍郷町

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1946年(昭和21年)11月1日に奄美大島で創刊された奄美群島を主要な発行エリアとする新聞。群島民挙げて参加した日本復帰運動をリードし、これまでにシマの文化向上・発展のための情報を伝えてきた。
現在も奄美群島の喜界島、奄美大島、加計呂麻島、請島、与路島、徳之島、沖永良部島、与論島の8島を発行対象とし、その地域のニュース・生活情報を提供。現在、奄美出身者向けに奄美のニュース(本紙掲載)を月1回コンパクトにまとめた情報紙、「月刊・奄美」も 発行している。

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