「白色型」もいる クロサギ
奄美大島は年間を通してさまざまな種類のサギが観察できる。「シラサギ」という言葉をよく耳にするが、それはダイサギ、チュウサギ、コサギ、アマサギなどの全身が白色のサギの総称である。島内で見られるほとんどのサギの仲間が渡り鳥だが、今回紹介するクロサギは年間を通して島内に生息する留鳥だ。海岸や河川で活動し、魚や貝、甲殻類などを食べる。
クロサギという名前の通り、全身が黒い。厳密にいうならば、カラスのような真っ黒ではなく、黒に近い灰色という方が正しいだろうか。このクロサギのややこしいところは、全身が白色にまとわれた「白色型」も存在することである。白色型は南西諸島では比較的割合が高いそうだが、人生のほとんどを南西諸島で過ごしている私にとっては、その感覚はわからない。
クロサギなのに白色のタイプもいる。ワタセジネズミやオリイジネズミという名前でありながら、モグラの仲間に分類される哺乳類もいる。生き物の名前に惑わされてしまいそうになることがある。
生育状況が異なる モクビャッコウ
奄美大島の海岸植生は、他の群島と異なる。石灰岩に生育する植物が、奄美大島には少ない。例えば、島内ではほとんど見られないテンノウメ(方言名テンバイ)は、喜界島や徳之島では岩礁を覆うようにびっしりと生えている。
日本国内ではトカラ列島から琉球列島に分布し、海岸の岩礁に生育するキク科常緑低木のモクビャッコウ。秋から冬にかけて、黄色の花を咲かせる。岩場に生える銀白色の独特な色は、遠くからでも非常によく目立つ。徳之島や沖永良部島の海岸に行けば、ごく普通に生えている。しかし、私が知っている奄美大島の生育地は、たった1カ所である。
護岸整備や園芸目的で採取され、個体数が減少していることから、環境省レッドリスト2020では、絶滅危惧Ⅱ類(VU)に選定されている。前述した通り、奄美群島の島によって状況は異なる。島それぞれの生育状況を考えてみると、「あの島にはたくさん生えているのにこの島には少ない」。そんな植物がわりと存在することに気づかされる。
(奄美博物館)
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