8月27日から28日にかけて奄美地方北部に接近、通過した台風10号の影響で27日から停電が続く鹿児島県の喜界島では、30日午後9時時点で740戸(総戸数の15・2%)が停電。4日目の夜を迎え「汗だくで眠れない」「疲れが取れない」「洗濯ができず、冷蔵庫の食料も限界」など、住民の疲労、ストレスが大きくなっている。島北部の小野津では、暗い夜道で転倒し手首を骨折した女性も。停電の長期化に悩まされる一方で「自分にできることを」と力強く話す声も聞かれた。九州電力送配電によると、全戸復旧は31日夜となる見込み。
町役場の充電所には30日も、停電が続く各集落から携帯電話を手に住民が多く訪れた。通信障害も島の中部から北部にかけて続いており、坂嶺在住の70代女性は「窓を開けてもとても暑く、汗だくで眠れない。どれだけ電気に頼った生活をしているか実感した」と肩を落とし、城在住の山内安江さん(56)は「夜は早く眠るしかない。薬を飲む時間や生活リズムも変わってしまった」と話した。
町は30日から同町湾の自然休養村管理センターを充電やシャワー、仮眠可能な休憩所として開放。同日午後7時までに約20人が訪れた。出身地の小野津に帰省していた巻富子さん(73)=東京都在住=は29日夜、停電が続く集落の路地を歩いていた際に車をよけようとしてバランスを崩し転倒、右手首を骨折した。「病院も大混雑、洗濯もできず困っているけれど。夜は真っ暗だし、戸を明けて夜空を楽しみながら過ごしています」と話した。
巻さんの姉の土岐初代さん(77)=小野津=は「停電も復旧する日が見えているから頑張れる。寝て食べられさえすれば大丈夫。壊れてしまったものは直せばいい。自分にできることをするだけ」と笑顔を見せた。
島内の停電復旧作業を行っている九州電力送配電の職員らは、徳之島など奄美群島の各地から来島。社員の一人は「実際に現場を確認すると、把握している以上に被害が大きい。欠航で作業車が島に入れず機動力が不足しているが、島内の器材や車両、人手でできる範囲の修理を続けている」と話した。
30日の喜界町の気温は午後1時に32・3度に達した。同日は雲も少なく、強い日差しの中で懸命に家の補修や片付けを行う住民の姿が各地で見られた。喜界島消防分署によると、同日午後3時までに熱中症の緊急搬送はなかった。
町総務課には30日午後5時時点で罹災(りさい)証明などの申請、相談が約30~40件寄せられた。断水は解消したものの、一時的に利用が集中した場合に給水が滞ることから、節水を呼び掛けている。隈崎悦男町長は「まずはライフラインの復旧が第一で、停電の早期復旧を願うばかり。通信障害は長引くことが懸念される。人的被害がなかったことが何よりだが、農作物の被害も大きく台風の進路が読みづらくなっていると実感した。今後意識しながら対応していきたい」と話した。
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