奄美クジラ・イルカ協会(興克樹会長)はこのほど、冬から春にかけて鹿児島県奄美大島近海に来遊するザトウクジラの2023年シーズンの調査結果(3月末現在)をまとめた。出現確認数は1634頭で、前季(1699頭)から微減。母子を含む群れの出現数は300群で、過去最高だった前季(204群)を上回った。加盟14事業者によるホエールウオッチング参加者も7325人(前季比1016人増)と、3年連続で過去最多を更新した。
調査は同協会の加盟事業者が、海上からの観察を中心に出現情報を計上した。今季は23年11月24日に奄美市住用町城海岸沖で初確認。1月下旬から3月中旬まで出現が多い状態が続き、2月中旬に来遊のピークを迎えた。
群れの平均頭数は1・75頭で、母子群が全体の32・2%を占めた。発見位置情報から、ザトウクジラが奄美大島近海を島沿いに移動していることや、南部の大島海峡、請島水道、与路島水道で母子群の滞留が多いことが明らかになった。個体識別調査では約400頭分(速報値)の尾びれの識別写真が新たに得られ、同協会は今後、北太平洋全域での照合に活用するとしている。
ホエールウオッチングは1~3月の参加者が前季(6309人)比116・1%で過去最多。参加者のうち54・4%が海中からクジラを観察するホエールスイムに参加した。同協会はホエールスイムの人気の高まりを受け、観察対象が母子群の際はスイム回数を6回から3回に減らすなどの自主ルールで対象への影響低減を図っている。
興会長は「今後もクジラへの影響を考慮し、安全なホエールウオッチング、ホエールスイムを推進していきたい」とコメントした。
ザトウクジラは体長12~14メートル、体重30トンにもなる大型のヒゲクジラ。頭部のこぶ状の突起と長い胸びれが特徴。夏場はロシアやアラスカなどの冷たい海で餌を食べ、冬季に繁殖や子育てのため、国内では沖縄や小笠原などの暖かい海域へ移る。