野鳥が一気に増える冬
奄美群島で観察されたことのある野鳥は約360種。これは日本で確認されたすべての野鳥のおよそ6割にのぼります。決して広くはない奄美群島で、これだけ多くの野鳥が観察できるのには理由があります。
奄美群島を含む琉球列島の島々は、多くの渡り鳥にとって、海路の上に点々と連なる安らぎの休息地となっているのです。また地理的な要因で、日本では観察する機会の少ない大陸系の珍鳥が迷い込む確率も高いのです。
奄美群島に一年中生息して繁殖をおこなっている鳥はおよそ40種、繁殖のために南の地方から渡ってくる夏鳥はわずか10種ほどなのに対して、越冬のために奄美を訪れる冬鳥や、奄美を通過する旅鳥はおよそ130種、迷って奄美にやってきたことのある鳥は180種におよびます。迷鳥も夏よりは冬のほうが多いため、奄美群島では冬の間、鳥の種類がとても増えます。
ナベヅル
冬は珍鳥が迷い込んでくることも多い。このナベヅルも出水から迷ってきたのだろうか。
冬鳥の代表、サシバを観察しよう
サシバは中型のタカの仲間で、奄美群島には毎年10月頃渡ってきて、翌年4月頃北へ帰っていきます。
サシバの繁殖地は日本本土、朝鮮半島、中国北部などです。里山に暮らし、トカゲやヘビ、カエル、昆虫などが好物です。
ところが、日本全国で里山的な環境が急速に減少し、本土ではなかなか姿を見ることができなくなってしまいました。いまでは絶滅危惧種に指定されています。ところがこのサシバ、越冬地である奄美では実に簡単に見ることができます。
農耕地が見渡せる枝やスプリンクラーの上にとまって、えさとなる小動物を探しているのです。本土から訪れたあるバードウォッチャーが冬の奄美のサシバを見て、「佃煮にできるほどたくさんいる」と感激していたのが印象的でした。
サシバ
冬の奄美ではいろんなところでサシバを観察できる。
奄美の鳥で一番繁殖が早いルリカケス
奄美に来られたら、ぜひここでしか見られない固有種の鳥たちにも目を向けてほしいものです。
多くの鳥は3月くらいから繁殖を始めるため、冬の間は静かで目立ちにくいのですが、鹿児島県の県鳥でもあるルリカケスは気が早く、1月くらいから巣作りを開始します。
奄美自然観察の森や金作原原生林など、冬の奄美の森を歩いていると、ときおり林床からがさごそ音が聞こえてくることがあります。ルリカケスがえさとなるどんぐりや巣材に使う小枝を探しているのです。そっと双眼鏡をのぞけば、目に鮮やかな瑠璃色の羽が見えるのではないでしょうか。
ルリカケス
止まり木で鳴くルリカケス。つがいの相手を呼んでいるのか。