旧暦8月最初の丙(ひのえ)に当たる20日、鹿児島県奄美大島ではアラセツ(新節)を迎えた。龍郷町秋名・幾里集落ではアラセツ行事「平瀬マンカイ」が行われ、ネリヤカナヤ(海のかなたの楽園)の神々に祈りをささげた。今年は、新型コロナウイルス感染予防のため「ショチョガマ」は中止となり、平瀬マンカイも関係者のみで行う異例の措置が取られた。祭り参加者は、豊作祈願に加え、一日も早いコロナの収束を祈った。
秋名のアラセツ行事は、アラセツ当日の早朝に、豊作を願い小屋を男衆が揺さぶり倒すショチョガマと、夕刻に海岸で海のかなたに五穀豊穣(ほうじょう)を祈る平瀬マンカイがある。国の無形民俗文化財に指定されており、毎年多くの観光客が全国から訪れている。
今年は100人ほどの人々が密集して小屋に乗るショチョガマはコロナの感染予防のため中止に。平瀬マンカイも無観客での実施とし、秋名アラセツ行事保存会のメンバーの家族のみが見守った。
同会によると、平瀬とは「岩」を、マンカイとは「招き合う」ことを指すという。20日午後4時、秋名の海岸にあるしめ縄をつけた「神平瀬」と「女童平瀬」の二つの岩にノロ役の女性5人と補佐役の男女7人が登り、海のかなたに向かって両手を左右に流すような手ぶりでニャダマ(稲の魂)を招き、唄を掛け合った。最後は、ノロ役が両手を合わせ拝み、浜辺で八月踊りを踊った。
保存会の窪田圭喜会長(79)は「今年はショチョガマを行えなかったのは残念だが、平瀬マンカイは昭和20(1945)年以降一度も中止したことがない。無事に行えてほっとしている。毎年、五穀豊穣と豊作にありがとうと祈っているが、今年はさらに、全世界のコロナが一日も早く収束するよう祈った」と話した。
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