鹿児島市の平川動物公園は5日から、奄美大島の固有種アマミトゲネズミの展示を始める。同種の一般公開は日本初で、展示するのは保全の一環として島外で飼育・繁殖させた個体。同園のほか、神戸どうぶつ王国、埼玉県こども動物自然公園、宮崎市フェニックス自然動物園でも同様に公開される。平川動物公園の福守朗園長は「奄美でもなかなか見られない生き物を間近で観察できる。展示を通して希少生物が置かれている状況にも関心を高めてほしい」と話し、来場を呼び掛けている。
アマミトゲネズミは奄美大島の森林にすむ夜行性のネズミで、体長約10~15センチ、体重約100~140グラム。主に木の実や昆虫を食べ、とげのような硬い被毛が特徴。徳之島と沖縄島北部にはそれぞれ固有種のトクノシマトゲネズミ、オキナワトゲネズミが生息する。環境省レッドリストの絶滅危惧IB類。国の天然記念物。
環境省は2017年、種の保存を目的に国内の3動物園でアマミトゲネズミの飼育を開始し、18年9月に宮崎市フェニックス自然動物園で初めて飼育下での繁殖に成功した。22年12月末現在、全国8施設で計71匹が飼育され、生態や遺伝子の研究・調査が進められている。
今回は飼育繁殖技術が向上し飼育下の個体数が安定してきたことを受け、生息域内外の保全活動や動物園の取り組みについての普及啓発を目的に4動物園での展示が決まった。
平川動物公園では21年3月にアマミトゲネズミの飼育を開始し、現在6匹を飼育している。公開する個体は、20年5月14日に宮崎市のフェニックス自然動物園で生まれた雌1匹。園内「発見の森」トゲネズミ舎で展示する。来場者はガラス越しに眠っているトゲネズミを観察し、録画された夜間の行動の様子を動画で見たりできる。
福守園長は「先日は1994年以来30年ぶりとなるルリカケスのひな2羽の巣立ちもあった。この機会に、来場した多くの人に奄美にすむ生き物たちのことを知ってもらいたい」と話した。