鹿児島県奄美群島日本復帰70周年の記念企画展「朝はあけたり、1953~『語り継ぐ』~次世代へ」の特別講演会が12月17日、奄美市名瀬の奄美博物館研修室であった。同館主催。奄美の救荒作物として人々の暮らしと共にあったソテツについて、郷土料理研究家の泉和子さんが食生活や栄養学の視点から解説。「日本復帰に向かった島民の強い精神力や体力は、ソテツに含まれる豊富な鉄分からも培われたのではないか。先人の経験や知恵から生まれたソテツ食を次世代にも伝えていきたい」と語った。
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講演会には市民ら約40人が参加した。泉さんは、戦中戦後の飢えに苦しむ厳しい生活の中、毒素を取り除く工夫を重ね、食材としてソテツが用いられ人々の命をつないだことや、生活の中にも根付いていたことを説明。畑の土留めの役割も果たしたほか、ソテツの実(ナリ)は民間薬、殻は燃やして虫よけ、わたはまりなどの玩具に活用されていたことや、運動会や豊年祭では葉でアーチを作り、クリスマス装飾用として海外へ輸出されていたことなどを紹介した。
さらに、「ソテツは『敬われてきたもの』『残したいもの』として島の人々に親しまれてきた」と語り、ソテツに含まれる栄養に触れ「各家庭でもナリ粉を使用した菓子や料理に挑戦してもらえたら」と呼び掛けた。
質疑応答では「奄美のソテツは今、外来種カイガラムシの被害の危機にある。かつての年中行事のように種を植え、次世代へつなぐことはできないか」との提案もあった。
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講演後はナリガイ(粥)とイュウ(魚)みその試食会も実施。奄美市名瀬の石神京子さん(85)は「子どものころソテツはいつも身近にあった。ナリガイを口にするのは約80年ぶり。昔とはにおいも舌触りも違う。山で農業をしていた父にナリガイのお弁当を届けたことも思い出した。父も母もいつ眠っているのだろうと思うほど、いつも働いていた」と当時を振り返った。
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