鹿児島県奄美大島の宇検村は、5日から11日にかけて島外の修学旅行生を受け入れる実証事業を初めて実施し、京都府から訪れた生徒たちが村内各地でさまざまな体験活動に参加している。平田(へだ)集落では9日、約40年途絶えていた旧暦7月1日の伝統行事「ハマムチ」を住民と生徒らが再現。集落文化の復興や活性化の起爆剤としての期待が高まった。
事業は村の観光基本計画(2023年度から10カ年)に基づき、自然と人が共存する地域資源を生かした観光振興を目指す取り組みの一環。一般社団法人巡めぐる恵めぐる(新元一文代表理事)が策定を受託し、各集落でのヒアリングを踏まえて内容をまとめた。
受け入れたのは、体験活動を重視した教育を展開する小中高一貫校、NPO法人京田辺シュタイナー学校(京都府)の初等中等部8年生(中学2年)の生徒23人と教員3人。滞在中は2班に分かれて行動し、9日は生徒11人と教員2人がハマムチを体験した。
ハマムチは、小学3年~中学3年の男子だけで一晩を過ごし、集落の浜で釣りや餅作りをする伝統行事。子どもの減少で途絶えていたが、この日は地元の経験者ら十数人が生徒らと一緒に一連の流れを再現した。
生徒らは釣り班と餅作り班に分かれて作業。餅作りでは白米をきねと臼でつぶして粉にし、水を混ぜて平たい団子にしたものをバショウの葉で包んで蒸した。生徒たちは住民らに教わりながら「ヨーハレマイヨイ、ヨーハレスイヨイ」の掛け声に合わせてきねを打ったり、火を起こしてまきをくべたりと昔ながらの調理法を体験した。
参加した生徒は「餅を作ったことがなく、思っていたよりも大変だった。昔の人たちが自然の力を借りて生きていたことがすごいと感じた」と話した。
地元から参加したハマムチ経験者の多くは、中学卒業後に集団就職で本土に渡り、定年退職後に帰郷した人たち。神奈川県から7年前に戻った益英勝さん(79)は「道具は(人の家から)勝手に借りてくるという決まりもあった。その意味が分かればまた面白いが、みんな一度都会に出ているので知らないまま。こうして行事をすることで地元の子どもたちにも知ってもらいたい」と期待した。
同事業を企画した新元代表理事(53)は「自然と共生し楽しむことが今、再評価されている。シマ(集落)の行事が楽しかったという記憶を持って帰郷した人たちの思いを形として残していけたら」と語った。
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