奄美群島の日本復帰69周年を前に、鹿児島県奄美市名瀬の楠田書店は12月、「奄美のガンジー 泉芳朗の歩んだ道」を出版した。復帰運動で中心的役割を果たした泉芳朗(1905~59)の旧名瀬市長時代の日記や、未発表の小説、詩などを収録している。発行者「泉芳朗先生を偲(しの)ぶ会」の楠田哲久会長は「貴重な資料であり、芳朗先生の人間性や文学者としての一面も見ることができる」と話した。21日から奄美市名瀬の同書店で販売する。
泉芳朗は米軍統治下におかれた戦後の奄美で、奄美大島日本復帰協議会議長を務め、14歳以上の住民99・8%が賛同した署名運動や、5日間のハンガーストライキなどを展開して奄美群島の日本復帰を強力に後押しした。
収録された日記や未発表作品は泉芳朗のおいである泉宏比古さん(64)=神奈川県=が茨城県の実家で発見し、数年かけて解読したもの。日記は表紙に「牛歩」と題が付いた大学ノート1冊で、1952年9月16日から11月3日までの出来事が直筆で記されている。
同年9月末の沖永良部・与論の二島分離報道に際し、3町村へ「内報に動揺せず初志貫徹のため共に奮斗せん」と呼び掛けたことや、日米の返還交渉に向けて米軍高官と良好な関係を築こうとする様子など、復帰運動がどのように進んでいったのかをうかがい知ることができる。
日記のほか、未発表の小説2作品と詩58編も収録。楠田会長は「多くの人に手に取ってもらい、芳朗先生と奄美の復帰運動について関心を高めてもらうとともに、今後の研究に役立ててほしい」と話した。
宏比古さんは今月奄美大島に来島し、25日に奄美市民交流センター(奄美市名瀬)で開かれる復帰69周年記念式典で日記など資料の一部を公開する。式典の後は同市名瀬の奄美博物館などで展示される予定。本書はA5版170ページ、定価1200円(税別)。
『南海日日新聞』LINEニュース配信中
その他のニュースはLINEでチェック!