鹿児島県奄美群島のサンゴ礁保全について考えるシンポジウムが7月31日、瀬戸内町のきゅら島交流館であった。基調講演した国立環境研究所生物多様性領域長の山野博哉さんは、奄美群島のサンゴが固有種や絶滅危惧種などの指標の評価から、国内で優先して保全すべき重要な海域となっていると説明。気候変動に伴う白化現象が懸念されるとして、保全の推進を呼び掛けた。
奄美群島サンゴ礁保全対策協議会主催。シンポジウムは2年に1度、群島各地で開催しているが、今回は新型コロナウイルスの影響で2018年以来4年ぶりに開催。奄美・沖縄の世界自然遺産登録1周年を記念して催され、地域住民ら約50人が来場した。
山野さんは「世界自然遺産の島におけるサンゴ礁保全」と題して講演。奄美・沖縄が遺産登録で評価された「生物多様性」に触れ、「海に囲まれた『奄美・沖縄』はサンゴ礁の生物多様性も重要」と強調した。
群島各島で地形が異なるなど、「多様な環境がサンゴや他の海洋生物の多様性を支えている」と説明し、国内でこれまでに確認されていなかった種類のサンゴも見つかるなど、「まだ分かっていないことがたくさんある」と述べた。
気候変動に伴う海水温の上昇によって、近年サンゴの白化現象が頻発していると指摘。今後の水温や海流の予測データを基に、白化が起きにくく、サンゴが生育しやすいと考えられる各島の地点を示し、優先して保全するよう呼び掛けた。
県立大島高校3年の重信瑚杜子さん、肥後咲朋里さん、安田菜音さんのグループは、日焼け止めの成分がサンゴに及ぼす影響について研究成果を発表。一部の化学物質がサンゴの白化を促す可能性があると指摘し、「サンゴに優しい日焼け止め」の提案など、今後の啓発活動に意欲を示した。
奄美海洋生物研究会の興克樹会長、瀬戸内町海を守る会の祝隆之会長は、奄美群島のサンゴ礁の現状や、保全の取り組みをそれぞれ報告した。
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