鹿児島県奄美大島だけに天然の個体が残り、絶滅の恐れがあるリュウキュウアユが近年、渡り鳥のカワウによる捕食被害によって、個体数の減少が懸念されている。島内5市町村でつくる奄美大島自然保護協議会は2020年度、秋の産卵期に防護網を設置するなどカワウ対策を本格化し、アユの保護の強化を図る。
カワウはウ科の大型の水鳥で、奄美へは冬鳥として飛来する。アユの生息状況を調査している奄美リュウキュウアユ保全研究会の専門家らが、飛来するカワウの数が近年増加しているとして、食害によってアユの個体数の減少が懸念されると指摘。
アユの捕食被害防止のため、川の水面にテープを張って産卵場を保護する試みを昨年11月に初めて実施し、関係機関によるカワウ対策の体制づくりを呼び掛けていた。
カワウ対策は、同協議会のヤジ分会(会長・村田英樹奄美市住用総合支所市民福祉課長)が進めるリュウキュウアユ保護増殖事業の一環。20年度は県の地域振興推進事業でカワウ対策のほか、コイなどの外来種の駆除やアユの個体数調査、保護増殖技術者の育成、小中学生対象の観察会などの普及啓発活動に取り組む。事業期間は3年。総事業費は563万2千円。
20年度は島内の自然保護団体に業務を委託し、秋にアユの産卵場となる住用川の下流に防護網を設置するほか、飛来するカワウの個体数の調査を行う。
村田会長は「飛来するカワウの数を把握して今後の対策を練りたい。アユの保存には長期的な取り組みが必要。将来的には奄振のソフト事業の導入も検討したい」と述べた。
リュウキュウアユは沖縄島にも生息していたが、急速な開発などに伴う生息環境の悪化で1970年代に絶滅し、奄美大島の個体を利用して定着を図っている。奄美大島でも赤土流出などで生息数が減り、環境省のレッドリストで絶滅危惧ⅠA類。県は条例で希少種に指定して保護している。
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