鹿児島県奄美市名瀬にあるゲストハウス併設の飲食店「en‐Hostel&Cafe bar」(永田陽祐代表取締役)は4月から、NPO法人あまみ空き家ラボ(佐藤理江理事長)と協力し、地域で増加する空き家の有効活用に向けた新たな事業を始めた。旅行者の宿泊所として空き家の貸し出しを希望する大家に代わり、enがSNS(インターネット交流サイト)やWEBサイトを活用し、集客対応業務や顧客対応を代行するサービス。大家の希望に応じて空き家の管理清掃も請け負う。
原則、改修などを済ませ、宿泊所として活用可能な空き家が対象。希望者には宿の雰囲気をよくするための装飾品や、宿泊施設向けの清掃備品などについてenが提案、助言を行う。宿の魅力を伝えるのに重要なWEBサイトに掲載する写真の撮影依頼にも応じる。
あまみ空き家ラボは、空き家オーナーにenが行う事業を紹介し、貸し出しを希望する場合の仲介を担う。
「将来的に奄美大島へ移住しようと空き家の購入を検討しているが、移住までの間もうまく活用したい」「両親が亡くなった後、実家を管理しているが空き家になっている」。
永田さん(36)は、そうした空き家を宿泊所として有効活用することで、夏季シーズンの宿不足緩和など観光課題の解消にも貢献できると考えた。
旅行者が支払う宿泊料金から集客や顧客対応、管理清掃などenが実施するサービスにかかる費用を差し引いた額を、空き家のオーナーに支払う。宿泊料の設定は、enと空き家のオーナーで協議して決める。
オーナーにとっては貸し出しによる収入に加え、空き家の適切な管理につながるなどのメリットがある。
すでに今月から、龍郷町の空き家1件の集客代行を実施。7月からは奄美市名瀬地区の1件で空き家の管理清掃なども含む運営代行業務を予定している。今後も、あまみ空き家ラボと連携し、代行業務を拡大していく。
現時点では集客代行は奄美大島一円、運営代行は奄美市、龍郷町の空き家が対象だが、体制を整え、徐々に対象範囲も広げたい考え。
宿泊手続きや鍵の受け渡しは、名瀬入舟町のenで行う。「鍵を必要としないスマートロックキーなどのシステム活用も考えたが、近隣の宿はあえてenまで足を運んでもらい、周辺のお店や観光スポットを紹介することで、屋仁川などへの誘客にもつながれば」と永田さん。「あまみ空き家ラボの協力があってこそ成り立つ事業モデル。地域の空き家問題解消にも貢献できる、三方良しの事業へと成長させたい」と話した。