世界自然遺産への登録が決まった奄美・沖縄4島。地元経済の強力な追い風になると期待されていますが、一方でアマミノクロウサギなど希少な動植物をどのように守っていくのか、課題も残されています。
夜の森に姿を現したアマミノクロウサギ。奄美大島と徳之島だけに生息する固有種で、国の天然記念物にも指定されている奄美のシンボル的存在です。1979年にハブを駆除するためにマングースが森に放たれたことで、その数は減少。近年はマングースの捕獲が進んで数は回復しつつあるものの、その生息を脅かすものがあります。
それは…車です。奄美大島でアマミノクロウサギが交通事故で死んだケース=ロードキルは増加傾向にあり、2017年に26件と、それまでで最多となりましたが、去年は50件に倍増。今年も5月末までに20件と多くなっています。
ロードキルの問題は、ユネスコの諮問機関IUCN=国際自然保護連合からの勧告でも指摘され、減らすための取り組みやその効果の検証などが求められています。
そしてもう一つ、課題となっているのが、野生化したネコ=ノネコです。奄美大島の森に600から1200匹いるとの推計もあり、アマミノクロウサギだけでなく、多くの生き物たちにとって、マングースに代わる新たな脅威となっています。
国は、2018年7月からノネコの捕獲を開始。先月までに227匹を捕獲し、そのほとんどをペットとして譲渡してきました。ノネコを減らそうと、奄美の一般社団法人「奄美猫部」では、「人も猫も野生動物も住みよい島へ」をスローガンに、ネコの適正な飼育などを呼びかける活動を続けています。
さらに観光客の受け入れ方も課題となります。1993年に屋久島が国内で初めて世界自然遺産に登録された後、島を訪れる観光客はピーク時には倍に増えました。
奄美でも観光客が増えすぎれば自然への悪影響も懸念されることから、世界遺産区域の金作原国有林では、2019年2月から認定ガイドの同行や人数の制限などのルールが定められ、アマミノクロウサギが多く生息する市道三太郎線でも今年10月から運用されます。
世界自然遺産登録はゴールではありません。自然を守り、残していくための新たなスタートとなります。