今年夏の世界自然遺産登録を目指す「奄美大島、徳之島、沖縄島北部および西表島」(鹿児島県、沖縄県)について、国連教育科学文化機関(ユネスコ)の諮問機関・国際自然保護連合(IUCN)の勧告が迫っている。勧告は登録審査がある世界遺産委員会(7月16~31日、オンライン開催)の6週間前までとされ、5月中にも出されることが想定される。IUCNの勧告は2回目で、2018年5月の「登録延期」勧告からの再挑戦。登録の鍵を握るIUCNの評価が注目される。
IUCNの評価は▽登録▽情報照会▽登録延期▽登録不可-の4段階で示され、ユネスコに評価報告書が提出される。世界遺産委員会では勧告を踏まえて審議し、同じ4段階の決議を行う。
評価が「登録」の場合は、遺産委でもそのまま認められる可能性が極めて高くなる。「情報照会」は追加情報の提出が求められ、1年後以降の再審査となる。「登録延期」は遺産の価値の証明が不足しているため、推薦書の本質的な改定が必要。推薦書の再提出後、再びIUCNの現地調査と勧告を経て、審査は2年後以降に持ち越される。遺産の価値が認められなければ「登録不可」となる。
自然遺産候補の奄美・沖縄をめぐっては、政府が17年2月、ユネスコに推薦書を提出。IUCNは前回、現地調査の結果、推薦地の分断などによって希少な動植物の保護が十分でないとして「登録延期」を勧告した。
政府はいったん推薦を取り下げた後、沖縄島北部の米軍北部訓練場返還地を編入するなど、勧告を踏まえて推薦内容を見直し、19年2月に再推薦した。同年10月の再調査を経て、20年5月ごろに再び勧告が出される見込みだったが、登録審査を予定していた夏の遺産委が新型コロナウイルスの影響で延期されたため、勧告も先送りされた。
勧告の時期については、遺産委が始まる6週間前とすれば6月上旬が期限とみられるが、例年通りであれば早まることも想定される。
環境省自然環境計画課の担当者は「IUCNから事前に通知はなく、特に情報は持っていない。いつでも対応できるようにしている」と述べるにとどめ、「IUCNが指摘した課題には、関係機関で連携して取り組んだ。『登録』となることを期待している」と話した。
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