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オンラインで出産・子育て支援 宇検村=ニーズに応え、取り組み強化

異次元の少子化対策に挑戦する―。岸田文雄首相が今年の年頭記者会見で、児童手当などの経済的支援の強化、幼児・保育サービスの拡充、働き方改革の三本柱を掲げた。首相肝煎り政策の「たたき台」が3月末にも示される中、地方自治体では、地域の実情に応じた対策が求められている。2025年にも、老年人口(65歳以上)が生産年齢人口(15~64歳)を上回ることが予想される鹿児島県奄美大島・宇検村では今、住民のニーズに即した取り組みの強化が進む。

村長から「出産・子育て応援交付金」を受け取る母子=7日、宇検村

■負担軽減、安心にも

産婦人科や小児科の専門機関がない宇検村は1月、安心して妊娠、出産、子育てができる環境を整えようと、無料通信アプリ「LINE(ライン)」や電話で専門医に相談できるオンラインサービスの提供を始めた。住民は無料で利用でき、2月末時点、村内の中学生以下の子どもがいる105世帯のうち約6割が登録済み。利用件数も産婦人科3件、小児科13件と徐々に広がりをみせる。

村保健福祉課は21年度、子育て支援の推進を目的とし、未就学児のいる54世帯に「子育て実態調査」を実施。育児ニーズの1位は「一時保育」(43%)、2位は「遊び場(屋内施設)」(34%)、3位は「病院(小児科、耳鼻科、皮膚科)」(21%)で、特に医療面で「専門機関が遠く受診するか迷う」「突発性の病気の時が不安だ」などの意見が多く寄せられたという。

課題解決に向けて導入されたのが、遠隔健康医療相談サービスを運営するKids Public(東京都、橋本直也代表)の「産婦人科オンライン」と「小児科オンライン」。スマートフォンから島外の現役専門医に24時間相談が可能で、症状を写真で送ったり、予約すればビデオ通話で対面カウンセリングを受けたりすることができる。

2児の母で、実際にオンライン相談を利用した保池美咲さん(32)=久志=は「夜間に頼れる窓口ができたことは、育児をする上で、大きな安心材料。島では産婦人科を受診するときは予約が必要で、移動も含めて時間の調整が大変だが、その負担が軽減される点でもありがたい」と話す。

■伴走型支援

同課は妊産期から子育て期まで切れ目のない伴走型支援の充実化にも取り組む。妊娠届と出生届の提出時に各5万円相当を支給する国の「出産・子育て応援交付金事業」に伴い、授乳期応援セット(マタニティーオイルなど)の進呈や助産師による母乳マッサージ(無料)、産後の家事援助などを開始した。

10カ月と3歳児を育てる杉浦理菜さん(38)=湯湾=は「定期面談があり、小さな悩みや不安を話すことで、気持ちが和らいだ。母乳のつまりが気になるときなどは家でマッサージが受けられ、大変助かった」と語り、9カ月と5歳の子を持つ恵麻美さん(38)=同=は「下の子は妊娠8カ月で破水し、本土に緊急搬送されて出産したが、役場から容体を気遣う電話をもらったり、産後のサポート体制の説明があったりと、心強かった」と言う。

■体制拡充へ

政府は4月1日の「こども家庭庁」の発足に伴い、全国自治体に24年度以降、妊産婦や子育て世帯、子どもへ一体的に相談支援を行う「子ども家庭センター(仮称)」の設置を努力義務化している。村保健福祉課でも設置に向け、今年度から子ども家庭支援員1人を配属する。担当者は「母子保健と児童福祉の一元化により、持続的な伴走型支援の強化、村の課題でもある『一時保育』など、さまざまなニーズに即した支援体制の構築に努めていく」と述べた。

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1946年(昭和21年)11月1日に奄美大島で創刊された奄美群島を主要な発行エリアとする新聞。群島民挙げて参加した日本復帰運動をリードし、これまでにシマの文化向上・発展のための情報を伝えてきた。
現在も奄美群島の喜界島、奄美大島、加計呂麻島、請島、与路島、徳之島、沖永良部島、与論島の8島を発行対象とし、その地域のニュース・生活情報を提供。現在、奄美出身者向けに奄美のニュース(本紙掲載)を月1回コンパクトにまとめた情報紙、「月刊・奄美」も 発行している。

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