生息数が少なく、珍しいとされるクモ「キジロオヒキグモ」が8月上旬、鹿児島県徳之島の伊仙町検福で見つかった。徳之島での生息確認は初めて。種を特定した東京大学農学部農学特定支援員の谷川明男さん(65)は「個体数が少なく見つけることが難しい種。生息の分布が更新される貴重なデータだ」と確認の意義を強調した。
確認したのは、同町で認定ガイドを務める美延優志さん(32)。8月7日、検福の鍾乳洞「銀竜洞」で開かれた自然観察会に参加した際に、洞窟の入口付近で見つけて捕獲。谷川さんに個体を送ったところ、キジロオヒキグモの雌であることが確認された。
キジロオヒキグモの雌は体長3センチほど。尾のように長く伸びる腹部が特徴で、サソリに似ていることから英語では「スコーピオン・スパイダー」とも呼ばれる。雄は体長1ミリほどで体形は普通のクモと変わらない。
谷川さんによると。国内の生息北限は栃木で南限は沖縄本島。奄美群島では奄美大島で確認されている。
今回の確認結果は11月に発行する日本蜘蛛学会のニュースレターに掲載し、捕獲した個体は標本として国立科学博物館に収蔵する予定。谷川さんは「生息の空白地が埋まり、専門家にとってはありがたい発見。徳之島はまだ調査、研究が行き届いていないため、今後も新しい発見があるのではないか」と期待した。
小さいころから生物好きだったという美延さんは「豊かな森が残る生物多様性の島ならではの発見」と喜び「クモは嫌われることも多いが、どんな生き物にも自然界での役割がある。目立たない小さな生き物への興味があると、世界自然遺産の価値を一層深く感じられる」と話した。
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