高さ20メートル近くにもなる常緑樹で、密集した艶のある葉と直立する姿がりりしく美しい。潮風害に強いため、昔から海辺の集落や屋敷周りの防風、防潮、防火林として植えられてきたなじみ深い樹木。
住宅事情の変化とともに多くの生け垣がコンクリート塀に変わってしまったとはいえ、本種の大木が立ち並ぶ風景はまだまだ残っている。中でも大和村国直集落の並木は圧巻、志戸勘集落もなかなかのもの。
雌雄異株で、写真は個性的な蕊(しべ)を持った雄花。雌花の中心には最初から小さな果実らしきものができている。
径3センチほどになる果実は柿にそっくりで、おいしそうな黄色に熟すのだが食用にならないようだ。
屋敷の守りだけではなく材は建築に、樹皮は染料材として用いられ、良いことずくめの正に「福をもたらす木」ではあるが、住人には悩みもあるらしい。
木の下には役目の終わった雄花が落ちて積もり、腐ると臭い。夜中にトタン屋根に落ちる果実の音で飛び起きることもしばしとか。高く伸び過ぎると日当たりが悪くなるためか、低く切り詰められた大木が並ぶ集落もある。
台湾、フィリピン~インドネシア原産で、奄美や沖縄では屋敷から逃げ出して野生化したものが多く見られるが、八重山地方のものは自生とする説も。
以前はオトギリソウ科またはテリハボク科に含められていたが新たな分類でフクギ科に。
フクギ科 分布・台湾、フィリピン~インドネシア
(アマチュア写真家)
『南海日日新聞』LINEニュース配信中
その他のニュースはLINEでチェック!