鹿児島県沖永良部島で古くから伝わる昔話を同島の方言(島むに)で紹介した絵本「塩一升の運(ましゅいっしゅーぬくれー)」がこのほど出版された。同島の国頭(和泊町)と上平川(知名町)の方言を収録。朗読音声と詳しい言葉の解説付きで、方言の多様性や魅力を学びながら楽しめる絵本となっている。
消滅危機言語の継承保存をしながらその仕組みをつくっていく「言語復興の港」プロジェクト(山田真寛代表)が企画、制作した。プロジェクトメンバーは地域言語の研究者、作家、デザイナーなどで構成。絵本制作に当たっては、地元住民が協力した。
資金はインターネットで不特定多数の人から寄付を集めるクラウドファンディングで調達。同島以外に、沖縄の与那国、竹富、多良間3島それぞれの方言と昔話を収録した絵本も出版した。
「塩一升の運」には、場面ごとにイラストと日本語標準語訳のほか、地元の人による朗読音声もついているため、島むにが分からない人も楽しめる。言語学者による物語全文の逐語訳と言葉の解説が付き、学術的な言語資料や学習教材としても活用できそうだ。
6月初旬、沖永良部島を訪れ、島内の学校、こども園、図書館など29カ所に書籍を寄贈した山田代表(39)は「方言を使うのが楽しいと感じるようになってほしい」、国頭方言の再話を担当した田中美保子さん(63)は「出身者も、絵本を通して島を懐かしく感じてもらえたら」と話した。
『南海日日新聞』LINEニュース配信中
その他のニュースはLINEでチェック!