奄美大島の海開きは全国的に見ても早く、毎年旧暦の3月3日の「サンガツサンチ」の日に行われます。
島内の各集落によってこの日に行われる行事は異なりますが、伝統行事の浜下れ(ハマオレ)が行われることも多いです。
浜下れでは、初節句を迎える赤ちゃんの健やかな成長を願って足を海水に浸けたり、家族で海辺に出かけてゆっくり過ごしたり。
奄美大島らしさを感じる、伝統的な風習が息づいています。
2022年のサンガツサンチは4月4日。
この日に行われた、海の安全や赤ちゃんの無病息災を祈願する神事に参加してきました。
伝統行事と聞くと堅苦しそうだと思うかもしれませんが、そこに集まったみんなで海を楽しんだり赤ちゃんを囲んだりと、笑顔があふれる楽しいイベントでしたよ。
その様子をご紹介します。
海の安全を祈願
朝10時、まずは海の安全を祈願する神事から始まります。2022年のサンガツサンチは、あいにくの雨。テントを張って神事を行いました。
木彫りの舟を模した台の上に並ぶのは、海の神様への御神酒や塩、供物の魚、米、野菜、果物など。献杯や祝詞(のりと)を捧げるなど神事が進み、献歌として島唄のヨイスラ節の演奏もありました。水平線の向こうに吸い込まれていくような島唄の歌声を聞くと、いよいよこれから島が輝く暑い季節がやってくるんだな、と会場の雰囲気も高まります。
清め払いの儀が無事に済むと海開きが宣言され、法螺貝の音が鳴り響きました。神事は全部で30分ほど。その間、集まっていた子どもたちが我慢できずに少し海に入る様子も見られ、みんな静かに神事を見守りながらも楽しんでいる雰囲気が感じられました。
赤ちゃんの無病息災を祈願
海の安全を願う神事のあとは、初節句を迎える赤ちゃんの無病息災を祈願。神主さんがお祈りをしてくれたあと、お父さんとお母さんが赤ちゃんを抱えて海に向かいます。
この日に生まれて初めて海に入った赤ちゃんがほとんどで、笑う子もいれば泣く子もいましたし、びっくりしたのかピタッと固まって動かなくなる赤ちゃんも。それぞれの反応がかわいらしくて、その場はたくさんの笑顔であふれました。
赤ちゃんを抱えているお母さんは、「晴れたらもっとよかったけど、でも家族で初節句に来れてよかったです。」と笑顔で話してくれました。
海に入らないとカラスになる!?
集落によっては、サンガツサンチに海に入らないとカラスになると言われているところもあるんです。わたしもカラスにならないために、足だけ海に浸けてきました。お、冷たくない!この日の水温は気温と同じくらいに感じ、寒さは感じませんでしたよ。
このあとは、それぞれ海で遊んだりお弁当を食べたり、家族や友達と自由に過ごします。サンガツサンチには奄美のヨモギ餅であるフチモチ(かしゃ餅とも呼びます)を食べる風習があり、海辺やおうちで食べるという人も。
フチモチがどんな食べ物なのかは、「『フチモチ』作りに挑戦!奄美大島の春を味わおう」でも詳しくご紹介しています。実際に作った様子もお伝えしているので合わせて見てみてくださいね。
サンガツサンチ(旧暦3月3日)に行われる、たくさんの笑顔があふれる伝統行事「浜下れ(ハマオレ)」。観光客でも気軽に参加できる場所もあるので、来年はぜひ体験してみてはいかがでしょうか?