「いやー、楽しいですよ!あの岬を越えたらどんな景色が見えるのかなとか、この坂を登れば少しでも強くなれるとか。そんなことばかり考えて歩いています」。屈託のない笑顔で語るのは、京都市の舞原満博さん(72)。鹿児島県奄美群島を「ピッチャン」と名付けた手押しカートと共に回っている。昨年4月から続く、徒歩での単独日本一周の旅の途中だ。2月6日に徳之島からフェリーで奄美大島入り。加計呂麻島や請島、与路島を経由し、10日ほどかけ奄美大島を一周する予定。
ㅤㅤㅤㅤ
舞原さんは肝属郡錦江町(旧田代町)出身で、京都府で大型バイクの販売・改造を手掛けていた。2011~12年には排気量1800ccの大型バイクを改造した「トライク」と呼ばれる三輪バイクで日本各地を巡り、奄美群島も訪れた。奄美では珍しい大型トライクは各地で注目の的となり、南海日日新聞社も当時、徳之島町でツーリング中の舞原さんを取材した。
69歳で脳梗塞を患い入院。「80歳になった時、この体では歩けない」と一念発起し、退院後に自転車で体力を培った。京都から鹿児島まで10日間、自転車で走り抜いたことで自信をつけ、徒歩での日本一周を決意。沖縄県宮古島に暮らす娘のもとで4カ月間トレーニングし、昨年4月19日、テントや着替えなど約30キロの荷物を載せた「ピッチャン」と共に京都市の自宅を出発した。
瀬戸内海沿いに中国地方を西へ進み、長崎県の五島列島や錦江町の実家を経由し九州を一周。さらに四国一周後、日本海側へ渡り北上。石川県からは南下し岐阜、愛知と順調に進んでいたが、10月下旬に和歌山県白浜市でピッチャンが故障。京都へ戻り2代目ピッチャンを手配し、11月8日に宮古島で再スタートを切った。
冬場は沖縄の島々を巡り、1月29日にフェリーで与論島入り。沖永良部島、徳之島の各島一周を経て6日、奄美大島に到着した。
「何があっても、絶対に諦めない」と自身の心に誓った旅。1日平均の歩行距離は約30キロで、疲労による足の痛みに苦しんだ日もあったが、ほぼ毎日歩き続け、8日時点での総距離は約6900キロに達した。スマートフォン片手にインスタグラムで旅の経路や地元の人たちとの触れ合いも投稿している。
「年齢を言い訳にしたくない。何歳になってもコツコツと努力すれば、どんなこともできる。そう多くの人たちに伝えたい」と笑顔で語る舞原さん。奄美大島と喜界島を回った後は、トカラ列島へ向かう計画。「全部で2万キロくらいになりそうかな。妻や家族には感謝しています」と少し照れた様子で話した。
ㅤㅤㅤㅤㅤ
『南海日日新聞』LINEニュース配信中
その他のニュースはLINEでチェック!