奄美群島の日本復帰70年の節目に「奄美らしさ」とは何かを改めて考える「暮らしの文化シンポジウム」が21日、鹿児島県奄美市名瀬の集宴会施設であった。パネルディスカッションの参加者からは「多様性」というキーワードが飛び交ったほか、「奄美らしさ」を感じるために海や山など自然との関わりを見詰め直すことが大切との意見があった。
シンポジウムは復帰70年を記念した自然体験機会イベントの一環で、島内5市町村でつくる奄美大島自然保護協議会が主催した。2021年7月に奄美・沖縄が世界自然遺産に登録されたことを受け、「奄美らしい」自然環境の保全の在り方・生かし方を考えるきっかけづくりとして開いた。
前半は北海道大学大学院の芝崎瑞穂さんが、宇検村で実施した聞き取り調査の様子を再現する形で、同村平田集落の盛宮信治さん、前田尚登さんの2人から昔の平田集落の暮らしや食、遊びに関する話などを引き出した。
2人は竹で釣り竿を作ってヤドカリを餌にし、焼内湾のサンゴ礁の上に立って釣りをして遊んだ思い出などを紹介。芝崎さんは近くの屋鈍集落は網を使った魚取りが盛んで、海の地形など環境の違いが、それぞれの集落の海遊びや生活に変化を与えていたことにも言及した。
後半のパネルディスカッションは奄美博物館長の久伸博さん、南海日日新聞社文化担当の久岡学さん、日本自然保護協会の中野恵さん、鹿児島大学1年の要田ののかさん、音楽家の村松健さんの5人が登壇。シンポジウムの企画・運営を担った一般社団法人「巡めぐる恵めぐる」代表理事の新元一文さんを進行役に、多士済々なメンバーで「奄美らしさ」を語り合った。
中野さんは平田集落の住民の話も引き合いに、「海の地形の違いが漁法の違いとして表れるように、自然を基点に各集落の性質、言葉、人の性格も違ってくる。それぞれで文化も違い、これが奄美の環境文化なのだろう」と話した。
久岡さんも「奄美は山を一つ越えれば言葉が違い、島ごとに地形や地質も異なる。他の琉球弧の島々とは異なる歴史を歩み、個性的な文化を育んできた。個性と多様性こそが、奄美らしさかもしれない」と述べた。
久さんは「昔は島の人の生活や文化が海、山、川と深く関わっていたが、それがだんだん薄れてきた」と問題提起。「そういった(関わりを取り戻すような)方法があれば、島らしさを感じることにつながるのではないか」と語った。
村松さんは「どうしたら『心地よく過ごせるか』。そこに意識とエネルギーを割いてみれば、海や山はまだまだ私たちを受け入れてくれるはず」。
要田さんは「奄美らしさ」として、人々の優しさや行動力を挙げ、「自然の中で遊ぶことの楽しさ、素晴らしさを感じられるような奄美であってほしい」とも話した。
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