新型コロナウイルスの影響で延期されていた国連教育科学文化機関(ユネスコ)の世界遺産委員会について、来年夏の開催が2日に正式決定され、審査予定の「奄美大島、徳之島、沖縄島北部および西表島」の世界自然遺産登録実現へ、鹿児島県奄美2島の行政関係者らは連携して取り組む決意を新たにした。環境保護に取り組む関係者からは、価値ある自然を未来へ継承するため、さらなる対策の強化を求める声が上がった。
遺産委の日程決定を受けて、塩田康一知事は「県では自然環境の保全と利用の両立、地域の機運醸成のための取り組みを多年にわたって推進してきた。引き続き関係機関との連携をさらに密にしながら、奄美の自然遺産登録に向け着実に取り組む」とコメントした。
奄美群島広域事務組合管理者の朝山毅・奄美市長は「新型コロナが拡大する世界的な非常事態の中、慎重に検討されて開催時期が決定されたと受け止める。登録審査に向けて改めて気が引き締まる思い。コロナ禍を克服した上で委員会が開催されることを願う」と期待した。
大島郡町村会長の高岡秀規・徳之島町長は「関係機関と連携を重ねて外来種対策などの取り組みを継続する。新型コロナの一日も早い収束を願うとともに、奄美群島民の念願である世界自然遺産の登録実現に尽力していく」と決意を述べた。
「登録実現に向けた喜びや期待以上に、今の時点では不安が大きい。保全管理の準備は思ったように進んでいない」と、徳之島で自然保護の普及啓発に取り組むNPO法人「徳之島虹の会」の美延睦美事務局長(57)は指摘する。「徳之島の推薦区域は小さく壊れやすい。世界遺産になっても、島の宝であることに変わりはない。島の人が守って伝えていく気持ちを持たないといけない」と呼び掛けた。
奄美大島では自然遺産登録に伴う観光客の増加を見据え、希少な動植物の観察スポットとして人気が高まる金作原(奄美市名瀬)や三太郎峠(同市住用町)で関係機関による利用規制の取り組みや検討が進む。
奄美大島エコツアーガイド連絡協議会の喜島浩介会長(70)は「人が増えるとたちまち自然は壊れる。ガイドや観光業者、住民も含めて、自然あっての観光であることを肝に銘じて登録審査に臨むべき」と強調。「奄美の未来は自然にかかっている。継続して利用するためには保護が第一だ」と対策の強化を訴えた。
奄美・沖縄を巡っては、政府は2017年2月、ユネスコに推薦書を提出。同年10月にユネスコの諮問機関・国際自然保護連合(IUCN)が現地調査を行ったが、推薦地の分断などによって希少な動植物の保護が十分でないとして、「登録延期」を勧告。政府は推薦を取り下げた後、19年2月に再推薦し、10月にIUCNが再調査。20年の遺産委で登録審査を予定していたが、新型コロナの影響で延期された。
遺産委は21年6~7月、中国・福州市で開催される。
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