鹿児島県龍郷町を中心に地域情報を発信するコミュニティーFM「エフエムたつごう」が5月で開局10周年を迎える。町内の行事や防災情報、個性豊かな自主制作番組などを周波数78・9メガヘルツに乗せて届ける、地域に根差したアットホームな放送局を取材した。
エフエムたつごうは、2014年5月24日に開局し、NPO法人「コミュニティらじおさぽーた」(椛山廣市理事長)が運営。町内全域に加え、奄美市笠利町や喜界島の一部で受信できる。自主制作番組や島内外のFM局から届く番組のほか、町側と連携し行政・防災情報、議会の様子も発信している。自然災害などの緊急時には町役場による防災放送に切り替わる。
5年ほど前からインターネット放送も開始。島外に暮らす出身者たちもエフエムたつごうに親しんでいるという。「奄美のほのぼの感」を発信し、聞く人たちに懐かしんでもらうことも目的の一つだ。
スタッフは局長を含む3人。パーソナリティーは約30人おり、すべて無償のボランティア。住民有志や地元ミュージシャン、地域で活動する同好会などが出演し、それぞれ自由なテーマでトークする。
椛山理事長(75)は「地元で活躍する人たちが発信の場として活用し、自分たちで番組を作り趣味のように楽しんでやってくださっている。ボランティアの方々のおかげでとても助かっている」と話す。
1日、瀬留にあるスタジオを訪れると、月~金曜日午前10時からの番組「なまらが」生放送が行われていた。番組では天気予報や町内の行事予定を伝え、新聞に掲載されている地域の出来事を紹介。この日は5月1日にちなんだ「こ(5)い(1)の日」などの話題で盛り上がり、パーソナリティーたちはジョークを交えながら和気あいあいとトークを繰り広げた。
ボランティアパーソナリティーを務める和田孝之さん(70)は「放送をしていると人生に張り合いが出て元気になる。すごく楽しい」と笑顔を見せる。
平岡正見局長(75)も元ボランティアパーソナリティー。自身が担当する毎週木曜日の番組では、地域で頑張る人たちを毎回ゲストに招いており、収録は300回近くを数える。
「自分でシナリオを書いて番組を制作する。最初は素人で簡単にはいかなかったが、街中でFMラジオの人だと気付いてもらえることもありうれしい」とやりがいを語り、10周年を機に「今後はもっと若い人にも聞いてもらえるよう、(リスナーの)裾野を広げていけたら」と意気込んだ。
身の回りのどんなに小さな情報も拾い上げる、地域密着型のコミュニティーFM。笑顔の絶えない放送局から、きょうも朗らかにシマの日常を届けている。