環境省奄美野生生物保護センターと鹿児島県奄美大島の5市町村でつくる奄美大島自然保護協議会は12日、瀬戸内町で特定外来生物のつる性植物ツルヒヨドリの防除実験を行った。ドイツの清掃機器メーカー日本法人のケルヒャー・ジャパン(神奈川県横浜市)らが協力し、熱湯を散布して植物を枯らす新たな外来種対策を検証。除草剤の使用や人力での駆除が困難な場所での作業効率化を期待している。関係者は「効果を確認して導入を検討したい」と話した。
ツルヒヨドリは南北アメリカの熱帯地域原産。11~12月に3ミリほどの小さな花を咲かせ、綿毛のある種を多量に付ける。折れた茎からも増え、猛烈な勢いで生育して他の植物を覆って枯らす。1999年に奄美大島で初めて記録され、2023年12月末現在、島内14カ所で侵入が確認されている。
熱湯散布による外来種防除は沖縄県でも実証実験が行われており、ケルヒャーに依頼して奄美大島で今回初めて実施した。場所は瀬戸内町勝浦の町道網野子峠線沿いののり面。手作業による駆除が展開されているが、落石防止金網の下に根を張っていて完全な防除が難しいという。
機器と作業員は同社が提供。100度近い熱湯を継続的に散布することで植物に育成障害を起こし除草する仕組みで、手が届かない狭い隙間にも効果が期待でき、1時間で60~120平方メートルの除草が可能。実験では計35平方メートルほどののり面を▽熱湯▽手作業▽除草剤│で区画分けし、1週間後と1カ月後の生育状況を比較する。
環境省奄美群島国立公園管理事務所の阿部愼太郎所長は「特定外来種の根絶に向け生育地に合った効果的な方法や体制を考える必要がある。まずは効果を見て関係者間で導入を検討していきたい」と話した。