奄美海洋生物研究会(興克樹会長)は2020年度、鹿児島県奄美大島の周辺海域に生息するマッコウクジラやミナミハンドウイルカの調査を進めている。冬季に来遊するザトウクジラを観察するツアーが人気を集める中、年間を通して見られる新たな鯨類の可能性を探り、奄美近海でのホエールウオッチング事業の拡大を目指す。
同島ではザトウクジラを冬場の観光に生かそうと、奄美クジラ・イルカ協会(興会長)が13年に発足。加盟する事業者らが出現状況を調べて情報を共有し、自主ルールを定めてホエールウオッチングのツアーを展開している。
クジラを間近で見られるツアーは人気を呼び、参加者は年々増加。20年シーズンは、8事業者で計3684人と前季の1.25倍に上り、過去最多を記録。奄美の冬季観光の目玉として期待が高まっている。
調査は奄美群島広域事務組合の民間チャレンジ支援事業を活用して実施。事業費は約182万3000円。同協会加盟事業者の協力で、これまでに沖合と沿岸で計9回にわたる船上、海中の調査を行い、マッコウクジラ3頭、マダライルカ1群約50頭、ミハミハンドウイルカ1群15頭を確認した。
マッコウクジラはハクジラの仲間で最も大きく、雄は体長15~18メートル、体重50トン超にもなる。角ばった大きな頭が特徴で、体長の3分の1に達する。ミナミハンドウイルカは体長2~3メートル。群れをつくって行動する。瀬戸内町で1974年に捕獲された個体が国内初記録。
国内では、知床、小笠原諸島でマッコウクジラを対象にホエールウオッチングが行われている。小笠原諸島や伊豆諸島の御蔵島などでは、ミナミハンドウイルカと一緒に泳ぐドルフィンスイムが知られている。
調査では、マッコウクジラは奄美大島北西の沖合で集中して見られ、興会長は「生息範囲が絞り込まれてきた」と話す。海面に潮を吹き上げる「ブロー」や、豪快にジャンプする「ブリーチ」などの行動も確認された。イルカは出現場所の予測が難しいが、ダイビングのツアーと組み合わせたドルフィンスイムが期待できるという。
今後は安全に観察するためのルールを検討し、事業化を目指す。興会長は「国内外、老若男女を問わずホエールウオッチングの人気は高い。調査を積み重ね、年間を通した鯨類ウオッチングを確立して持続的な事業展開を図りたい」と述べた。
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