鹿児島県奄美大島で絶滅の恐れのある国の天然記念物ケナガネズミの交通事故が今年に入って急増している。
環境省奄美野生生物保護センターによると、2019年の交通事故確認件数は11月末現在、12件で、記録のある11年以降で最も多い。秋以降は繁殖期を迎えて活動が活発になっており、同センターは夜間の運転に注意するよう呼び掛けている。
ケナガネズミは奄美大島と徳之島、沖縄島の固有種。体の大きさが20~30センチと国内最大のネズミの仲間。尾が胴体より長く、先の半分は白いのが特徴。長い剛毛が和名の由来。環境省のレッドリストで絶滅危惧1B類。種の保存法で国内希少種に指定して保護している。
奄美大島の交通事故確認件数はこれまでに17年の4件が最も多く、18年は1件にとどまっていた。19年の月別の事故確認件数は5月が5件で最も多く、9月の3件と続く。
同センターによると、同島では野生生物を襲う特定外来生物マングースの駆除が進んだことで生息環境が改善し、ケナガネズミの生息範囲が回復しているとみられる。事故は交通量が多い国道や県道など、これまで発生していなかった場所で多発している。
今年に入って事故が急増している原因について、同センターの早瀬穂奈実国立公園管理官は「今まで見られなかった場所で目撃情報が増えている。餌資源などの条件がよかったからでは」とみている。
ケナガネズミは秋から冬に繁殖期を迎えて活動が活発化する。
事故防止に向けて「奄美大島と徳之島、沖縄島北部にしか生息していない貴重な動物。特に夜間の運転は野生生物が飛び出してきてもすぐに止まれる速度で、安全運転をお願いしたい」と話した。
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