自然と文化を活用した地域活性化策を考えるシンポジウムが1月29日、沖縄県国頭村の安田(あだ)地区公民館であった。奄美・沖縄の世界自然遺産登録後の課題や取り組みについて、安田壮平奄美市長、知花靖国頭村長らが報告。地元住民や観光関係者、専門家を交え、持続可能な発展に向けた環境保全や観光利用の在り方を話し合った。
奄美・沖縄の世界自然遺産登録から1年半を経て、地域コミュニティーが主体となって自然や文化の活用策を探り、「地域創生」を図ろうと、地元住民や民間団体、行政などでつくる実行委員会が主催。関係者ら約100人が参加した。
安田区の上地哲区長はあいさつで、同区が「ヤンバルクイナの里宣言」を出して保護を進めた歴史を紹介。「ヤンバルクイナをシンボルに、希少な動植物を守り、豊かな自然を未来へ引き継ぐため、地域を挙げて取り組んだ」と述べ、自然環境を生かした地域活性化に期待を寄せた。
知花村長はヤンバルクイナのロードキル(交通事故死)対策や、希少種の密猟防止に向けた林道の夜間通行許可制度などの環境保全の取り組みや、旅行業者と連携した電気バスツアーなど環境に配慮した観光振興策を示した。
安田市長はアマミノクロウサギのロードキルや観光客の増加に伴う過剰利用を課題に挙げ、金作原(奄美市名瀬)や三太郎峠(同市住用町)などで導入した利用規制の試みを紹介。
市民参加型の政策実現を目指し設立した「世界自然遺産活用プラットフォーム」の取り組みも示し、「世界遺産を活用するためには、地域住民に自分ごととして考えてもらうことが大事だ」と述べた。
NPO法人どうぶつたちの病院沖縄の長嶺隆理事長がヤンバルクイナを飼育して繁殖させる取り組みや、生態展示学習施設の整備など保護と活用策を説明。国内外の河川再生の取り組みや、世界文化遺産候補の「佐渡島の金山」(新潟)の登録に向けた動きの紹介もあった。
会場との質疑では、観光客の増加による環境負荷を懸念する指摘もあり、持続可能な観光のため「付加価値の高い観光を目指すべき」と「量」から「質」への転換を求める声が出された。「やんばるは自然と文化が密接に結びついている」として、観光資源として伝統文化を活用する提案もあった。
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