長年続いた転出超過と少子化で、児童生徒の数が減り続けている。鹿児島県大島支庁発行の2022年度「奄美群島の概況」によると、群島内の小中学生は昨年5月時点で9165人。1995年の1万8765人から約30年で半減した。学校の小規模化が進む中、群島内の多くの自治体は島外などから児童生徒を受け入れる「山村留学」に取り組んでいる。学校と地域が密接に関わる奄美では「学校は地域の活力」との考えが根強い。山村留学に 〝学校存続〟の願いも託す地域の現状と課題を探った。
ㅤㅤㅤ
■活性化対策委
宇検村(奄美大島)は2010年から阿室小中学校、11年から名柄小中学校で「親子山村留学事業」を実施している。対象は村外から移住する小中学生とその保護者で、期間は中学校卒業まで。村は児童生徒1人当たり月3万円の特別助成金を支給し、家賃が1万5000円以上の場合は最大月7500円を1年間の期限付きで補助している。
事業の実施に当たって各校区では、地域住民や学校管理職、PTA役員などで地域活性化対策委員会を組織。委員らは村教育委員会と連携しながら、住宅の確保や体験留学の受け入れ、留学生との面談などをボランティアで行っている。
阿室小中学校の全校児童生徒数は現在19人で、うち4人が留学生。校区地域活性化対策委員会の吉久征男会長(50)は「以前は児童生徒が10人を切っていたが、今は20人前後で推移している。児童生徒が増えると教師も増える。(親子山村留学が)比較的うまくいっており、バランスがいい状態」と話す。
事前の体験留学時の面談では、委員らが保護者や児童生徒に留学動機や在籍校での様子などについて話を聞き「集落でのリアルな生活や、地域で協力してほしいことなど要望も伝えた上で受け入れの是非を判断している」という。
名柄校区は今年度、親子留学で3世帯6人の児童を受け入れた。現在、名柄小中学校は児童生徒13人のうち半数以上の7人が留学生だ。6月2日にあった校区地域活性化対策委員会23年度総会では、新型コロナウイルスの影響で実施できていなかった各種行事を再開することを決め、委員らが「都会から来ている子どもたちに島ならではの生活を楽しんでほしい」と願った。
藤原博徳会長(70)は「学校は名柄集落の中心部に位置している。児童生徒がいなくなり休校・廃校になれば、地域も廃れてしまうだろう」とし、「親子留学のおかげで集落がにぎやかになった。子どもたちの声があるのは地元住民にとってうれしいこと。村の留学制度が続く限りは努力を続けて、せめて小学校だけでも存続していければ」と話した。
■地域に貢献、定住も
阿室、名柄校区では、親子留学で移り住んだ家族が留学期間終了後も定住したり、保護者が地域活性化委員会の活動に参加したりすることもあり、同事業が地域の担い手確保にもつながっている。
阿室校区では現在、地域活性化対策委員36人のうち8人が留学生の保護者や元保護者。新しい留学生の受け入れ業務にも携わっている。吉久会長は「地元で委員会を運営する人材を見つけるのが難しくなる中、親子留学で来た保護者たちが集落に溶け込み貢献してくれている」と信頼を寄せる。
阿室校区委員会の村上仁二副会長(52)は8年前、栃木県から未就学児と小学5年生の子どもを連れて親子留学。「集落は昔ながらの人のつながりが深く、地域全体で子どもを育てている。地元の人たちにすごくお世話になっているので、できることは協力するようにしている」と語った。
『南海日日新聞』LINEニュース配信中
その他のニュースはLINEでチェック!